生卵を食べるのは、ヘビと日本人だけである。
日本には醤油とご飯でいただく「卵かけご飯」をはじめとして、最近世間を賑わせた讃岐うどんにも「釜玉」(熱々の釜揚げうどんを生卵の上に落とし、出汁をかけて食べる)という生卵を使った料理がある。
さて、「卵百珍」とは、江戸時代の天明5年(1785年)に出版された「万宝料理秘密箱」という料理本の「卵之部」(卵料理記載部分)のことである。 ここには103種類に及ぶ様々な卵の料理方法が記されていて、「卵百珍」は「万宝料理秘密箱」の前編一〜五にみることができる。
このなかでとくに有名なのが、「卵百珍」の15番目に記載されている「黄身返し卵」である。長い間(200年ほども!)つくりかたがあきらかになっていなかったもので、これは次回のコラムで作り方をご紹介したい。
日本人は、江戸よりもっと昔から卵を様々な調理方法で食してきた。卵は物価の変動に影響されにくい「物価の優等生」として誉れだかいが、調理のバリエーションをとってみても多様な変化を見せる。茶わん蒸しを固まらせたり、ケーキを膨らませたり、マヨネーズのように調味料になったりする。生のままで食すというのも、その様々な調理方法のなかの一つにすぎない。
卵かけご飯などは、日本の米文化がなければなかなか生まれなかっただろうし、さらに新鮮な卵が手に入らなければ食べることができない。ニワトリを身近なところで愛でてきた日本人ならではの食文化である。
さあ、そろそろ卵かけご飯が食べたくなってきた。筆をとめなければならない。
たまご博物館
http://village.infoweb.ne.jp/~takakis/
卵百珍
http://homepage3.nifty.com/takakis2/hyakutin.htm