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無脊椎動物標本リスト(3)

動物部門収蔵資料

はしがき - 無脊椎動物標本リスト(3)

上島 励  編集

東京大学総合研究博物館動物部門主任
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻

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東京大学総合研究博物館動物部門所蔵 無脊椎動物標本リスト

 本書は、標本資料報告62号、82号に続く東京大学総合研究博物館動物部門所蔵の無脊椎動物標本リストの第三部である。

 当館動物部門所蔵の無脊椎動物標本は、旧東京帝国大学動物学教室が所有していたもので、明治から大正時代にかけて採集された多様な動物門を含む。これら無脊椎動物コレクションのデータベース化および各分類群の専門家による詳細な調査は平成11年から継続しているが、今回は広義の多毛類(吸口虫類を含む)、貧毛類、ヒル類の調査結果がまとまり、本書を環形動物門の特集号として出版することができた。今回の調査により、当館所蔵の環形動物標本(合計219ロット)には飯塚啓、丘浅次郎、五島清太郎、畑井新喜司によって研究された貴重な資料が含まれていることが明らかになった。彼らはいずれも明治から大正時代にかけての日本の動物学の黎明期に活躍し、それぞれ日本人としては初めて多毛類、ヒル類、ミミズ類の分類学的研究を行った先駆的な動物学者である。彼らが命名、記載した分類群のタイプ標本は長らく所在が不明であったが、少なくとも30ロット(多毛類27ロット、貧毛類2ロット、ヒル類1ロット)のタイプ標本が当館に存在することが判明した。これらの再発見されたタイプ標本は、既に最新の分類学的研究に用いられ、その成果は続々と発表されている[Nishi, E.(1996) Species Diversity 1; Sato & Nakashima (2003) Zool.J.Linnean Soc. 137; Nakano,T.(2010) Zool.Sci. 27; Nakano, T.(2011) Species Diversity 16]。百年以上も昔に採集された博物館標本が、生物種多様性研究では最新の研究資料として活用されていることは特筆に値する。今回調査された資料にはタイプ以外にも、宿主新記録などの貴重な標本が発見されており、今回データベース化された標本は様々な研究分野で活用されることが期待される。

 一方で、飯塚らが記載した環形動物の57分類群(多毛類26分類群、貧毛類25分類群、ヒル類6分類群)ものタイプ標本が紛失したことも明らかになった。このようなネガテイブな情報は、過去の標本管理を反省すべき材料であるが、一方でネオタイプの選定には必須の有益な情報であり、積極的に公表していく必要がある。

 本書に収録された論文および標本の詳細なデータベースは総合研究博物館のHP上でも公開しており、国内外からのアクセス、検索が可能である。

/DDoubutu/invertebrate/polychaeta/index.html

/DDoubutu/invertebrate/oligochaeta/index.html

/DDoubutu/invertebrate/hirudinea/index.html

 本報告を出版するにあたって多くの方々にお世話になった。横浜国立大学の西栄二郎博士は、長年に渡って多毛類標本を精査して頂き、本報告の原稿を執筆して頂いた。Robert J. Blakemore 博士は貧毛類を、中野隆文氏と伊藤哲也氏はヒル類標本を鑑定し、調査結果をまとめて頂いた。当博物館の伊藤泰弘博士にはweb上のデータベースを構築して頂いた。本報告のもとになった無脊椎動物標本データベース化プロジェクトは、東京大学総合研究博物館の公開利用経費およびプロジェクト経費(平成11年〜23年)による援助を受けた。また、本プロジェクト遂行に当たっては、総合研究博物館の研究部教員、事務職員の方々からの様々なご支援を頂いた。この場を借りて厚くお礼申し上げる。

 

平成23年10月1日

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