緒言
東京大学総合研究博物館所蔵のシャコ類は福田卓(後、駒井に改姓)により報告された日本産標本が核となっている。福田は東京帝国大学在職中に発表した一連の論文(1908, 1909a, b, 1910a, b, 1911a, b, 1913, 1914) において、4新種を含む19種を報告し、日本産シャコ類の分類学的研究の基礎を築いた。Osawa et al. (2004)は,東京大学総合研究博物館所蔵の標本中に、失われたとされていたシリブトシャコBathysquilla crassispinosa Fukudaのホロタイプを見い出し、また,日本新記録種Gonodactylus childi Manningを含む6属7種の標本を報告した。今回、これらを含むすべての標本を調査したところ、東京大学総合研究博物館所蔵のシャコ類(甲殻綱口脚目)標本は8科16属20種にのぼることが明らかになった。日本産シャコ類は10種で、その他の標本は戦争や混乱を経て、福田が扱った標本の一部は失われてしまった可能性がある。
日本産シャコ類の分類研究史は浜野 (2005)によりまとめられている。この大部の著作には、既知の日本産全種、12科56種についての特徴が検索表とともにまとめられ,また,水産資源として重要なシャコ Oratosquila oratoria (de Haan)を中心として生態から資源管理に至るまで詳細に言及されている。
謝辞
本原稿を準備するにあたり、東京大学理学系研究科の上島励博士には所蔵標本の調査に便宜をはかっていただいた。また、琉球大学理工学研究科の大澤正幸博士には同定についてアドバイスいただいた。記してお礼を申し上げる。