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東京大学総合研究博物館所蔵クモ類標本目録

谷川明男

東京大学大学院 農学生命科学研究科生物多様性科学研究室

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緒言

 東京大学総合研究博物館に収蔵されているクモ類標本について整理した.これらの中にタイプ標本はなく,過去の研究に用いられた標本も含まれていない.標本ラベルにHolotype,Paratypeと表示されているものがそれぞれ1点ずつあるが,いずれについても,ラベルに記入されている学名は記載の存在しない無効学名である.ラベルが添付されていない場合も多く,学術的に価値の高い標本はほとんど含まれていない.ただし,三宅島産キシノウエトタテグモ(UMUTZ-Aran-4-1)と台湾産ヤスダオニグモ(UMUTZ-Aran-26-2)とについては,それぞれの島での生息記録がないので,これらの標本が唯一の生息情報となる.

 大正時代,東京大学の動物学教室に所属していた岸田久吉氏は,クモ類の分類を手がけた日本人研究者として草分け的な存在である.彼は,膨大な数の学名を流布したが,そのうちのほとんどのものは記載の存在しない無効名であった.有効名も45種存在するが,そのいずれについてもタイプ標本の存在が不明のままである.今回の標本整理で,彼の指定したタイプ標本が発見されることも期待されたが,残念ながら発見されなかった.日本のクモ研究者の間では,彼のタイプ標本の存在についてはすでに絶望視されており,ネオタイプが指定されているものもある.今回検討した標本は、旧動物学教室所蔵のクモ類標本で現存する唯一かつ全ての標本であり、問題のタイプ標本は存在しない可能性がきわめて高いと考えられる。

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