緒言
この目録は東京大学総合研究博物館動物部門で保管されている腕足動物標本についてまとめた。これらの標本は動物学教室に由来するもので、内容は舌殻綱が22、頭殻綱が1、有関節綱が51、ホウキムシ類が1の計75標本である。
これらの標本内にはタイプ標本はなく、また論文に用いられた標本も含まれていない。採集ラベル(地名、日付、採集者名)が付加されていないものや、長い年月の間に標本の管理が十分に行われず、液浸標本のエタノールが蒸発し、乾燥してしまった標本もあり、学術標本としては粗末な状態のものも多い。しかし、ラベルが付加されている標本は明治時代(1888-1911年)に日本各地にて採集されたものであり、採集者の名前にも当時の理学部動物学教室の箕作佳吉、飯島魁、田中茂穂らの名前が見られ、歴史的価値は高い。更に標本の交換によって入手したと思われる外国産の種も幾つか含まれている。
これらの標本で特筆すべき事としては、シャミセンガイ(Lingula anatina)については今では絶滅してしまった瀬戸内海の集団標本が含まれている。また、特に三崎においては現在では採集されることがない種(Terebratulina crossei)や、数が激減し採集されることが非常に珍しい種(Lingula anatina)が大量に採集されており、産出記録として大変重要である。
本目録は、データベースソフト ファイルメーカーPro ver. 4により作成され、現行の腕足動物・箒虫動物分類表に従い、標本番号ごとに1) 標本の個体数、2) 標本の状態、3) ラベルに記載されている情報、4) 備考の項目を記してある。ラベルについては複数枚存在し、内容が重複する場合には要約を記した。