東京大学総合研究博物館動物部門所蔵ウミエラ類標本
今原幸光
(財) 黒潮生物研究財団 黒潮生物研究所 和歌山研究室
緒言
本文は、東京大学総合研究博物館動物部門が所蔵する刺胞動物のウミエラ類標本についてまとめたものである。動物部門に保管されている刺胞動物門の他の分類群と比較すると、ウミエラ類の標本は点数が少なく、またタイプ標本も含まれていない。これは、ウミエラ目が比較的小さな動物群であることと共に、標本が採集された当時の東京大学動物学教室には、ウミエラ類の分類学を専門とする研究者がいなかったためであると思われる。しかし、保存標本の中には、後述のように第４代教授飯島魁の依頼を受けた英国アバディーン大学のトムソンとレネットが、東京大学理科紀要の記念すべき第1巻に発表した標本が含まれていた(Thomson & Rennet, 1927)。本文では、総合研究博物館所蔵のウミエラ類標本の概要と、日本におけるウミエラ類の研究史について述べた後に、全標本のリストとラベル情報を最新の分類体系に沿って示す。
謝辞
東京大学大学院理学系研究科の上島励准教授には、今回の標本調査を行う上で多大な便宜を図っていただいた。また、(財) 黒潮生物研究所の岩瀬文人所長には難解なラベル解読についてアドバイスをいただき、国立科学博物館の並川洋主任研究官には、相模湾における漁場の呼称に関する飯島の文献 (Ijima, 1901) 等のアドバイスをいただいた。滋賀県立琵琶湖博物館のマーク・グライガー総括学芸員には英文原稿の校閲をしていただいた。記してお礼申し上げる。
