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若狭国小浜藩から貢進生として大学南校に入学した和田維四郎が開成学校助教から東京大学助教授・教授、地質調査所長、鉱山局長、官営製鉄所長官と職を転ずることがあっても、終生変えなかったのが鉱物収集でした。和田鉱物標本は、維四郎の収集した日本最大の鉱物標本コレクションです。今回の展示では、和田鉱物標本の他に、彼の後継者が収集した鉱物標本や、若林弥一郎が還暦を機に東京大学に寄贈した鉱物標本(通称若林コレクション)など、明治期に東京大学に収蔵された鉱物標本を一堂に集め、学問と標本の濃密な関係を示しました。
幸いに、多くの方々に来館して戴き(入館者数8378名)、その方達のお話を直接に聞く機会を度々持つことができました。期待していた以上に一般の方々が鉱物や結晶に深い関心を持っておられること、また初めて鉱物に接して自然の造形の美しさに感動されたことなど口々に語っておられたのが印象的でした。
また、今回の展示を機会に、絶版で入手が極めて困難な「日本鉱物誌(初版)」、「本邦鉱物標本」を覆刻することができました。この2冊の著書は明治期の日本の鉱物学の金字塔ともいうべきものです。この覆刻も非常に好評で、初日から購入希望の方が多数来館されました。
本展示にご協力いただいた学内外の皆様に感謝いたします。特に、会場での展示解説を担当してくださいました博物館ボランティアの方々にはお名前を記して謝意を表します(順不同、敬称略)。
飯干ユミ、伊藤道子、内田三和子、鵜原一彦、岡村幸子、沖川康子、兼中雪絵、神田理子、国近尚三、熊谷昌子、小久保恭子、齊藤春江、齊藤庸子、坂井千里、佐藤和子、鈴木治雄、住田美和子、竹ノ内育子、冨森孝子、中島久美子、福田稔、渕上妙子、舩窪英子、星佳子、堀井美喜雄、堀江千江子、本田壽子、馬渕恵子、三浦由喜子、三好史郎、森下研子、柚木陽子、松山薩男
去る7月23日、昨年に引き続き2001オープンキャンパスが開催された。安田講堂での午前中の講演会の後、高橋館長、田賀井教授から博物館の説明、見学の心得、展示の概説が行われた。1200名以上の応募者の中から抽選で選ばれた約600名の高校生が、4つのコースに分かれ更に50名程の班に分かれ、順次、当館をそれぞれが30分位の予定で見学した。
当日は7月14日から特別展である和田鉱物標本展が開催されている最中であり、月曜日のために休館日にあたっていたので、博物館スタッフをはじめとして大学院生、事務官が総出で対応にあたった。開催中の鉱物標本・カワイルカのみでなく、当日のために特別に陳列した植物、考古、骨、隕石等の標本をくいいるように見つめ、熱心にスタッフや院生に質問する姿が数多く見受けられた。時間の余裕が昨年に比べ不足していたため、博物館に心を残して次の訪問先に行かざるを得ない高校生の中には、スタッフの丁寧な説明で興味を持ち、後日の再来館を希望する者が出るほどであった。
当日は、35度を越す猛暑の中、幸い何のアクシデントもなく、無事見学は行われ、5時すぎまで元気な声が響いた。
Ouroboros 第15号
東京大学総合研究博物館ニュース
発行日:平成13年10月19日
編集人:西秋良宏・佐々木猛智/発行人:高橋 進/発行所:東京大学総合研究博物館