目次 メッセージ 常設展示 資料部から コレクション 案内 ニュース

ご挨拶

川口 昭彦


本館館長

本年4月1日から博物館館長に就任いたしました。よろしくお願いいたします。まず、自己紹介から始めさせていただきます。私は総合文化研究科・教養学部に所属しており、学部前期課程(1・2年生の教育)、学部後期課程(3・4年生の教育)および大学院に関与しております。学部前期課程では、分子・細胞レヴェルの生命科学の講義をしております。学部後期課程では、平成8年に新設されました生命・認知科学科に所属しております。生命・認知科学科は、自然科学の中で目覚ましい発展を遂げている生命科学を軸として、「こころ」と「意識」を実証的に研究する学際分野として急速に台頭しつつある認知行動科学を織り込んだユニークな学科です。すなわち、生命現象一般と人間の精神活動を「DNA分子の解析から人間の認知・意識まで」という一つの連続した軸の上でとらえて新しい教育研究分野を開拓しようという試みです。私の研究は二つの大きな流れがあります。第一は脂肪酸代謝に関与する多機能酵素の機能領域の解明と遺伝子構造の解析であり、第二は温度環境の変化に対する細胞膜構造の適応機構です。二つの研究テーマは無関係のように見えるかもしれませんが、細胞膜を構成している脂肪酸の質や量を変化させて環境に適応しますので、脂肪酸代謝が重要な働きをしているわけです。
総合研究博物館は東京大学の中で非常に重要な位置にあると思います。21世紀の東京大学の発展は総合研究博物館に依存しているといっても過言ではないでしょう。20世紀の社会は限られた領域内での最適化を進めてきました。私達の研究も先端化し、これによって社会の発展に貢献したことは誰も疑いません。ところが、この発展の結果、今まで無関係と思われてきた領域間で相互関係が生じています。それぞれの領域の中で先鋭化してきた科学技術が、地球環境をも変えてしまいそうになっているのです。今こそ、多様な立場からわれわれの身の回りで起こっていることを見直す必要があります。すなわち、これからは多様性が支える豊かな社会の構築の努力が必要でしょう。このような社会情勢の中で、蓄積されてきた「モノ」を異なる立場から見つめて、新しい多様な「知」に対する情熱をかき立てるのが総合研究博物館の使命と思います。東京大学は11研究科と20以上の研究施設から構成されております。東京大学が総合大学として発展するためには、総合研究博物館が、それぞれの研究科や研究施設と「モノ」をとおしたネットワークによって、新しい「知」の枠組みを構築することが求められています。
博物館の運営という面では全くの素人です。皆様のご協力、ご助言あるいは叱咤激励を切にお願いする次第です。

footer

(本館館長)

  

Up For

目次|メッセージ| 常設展示資料部からコレクション案内ニュース


Ouroboros 第8号
東京大学総合研究博物館ニュース
発行日:平成11年6月1日
編者:西秋良宏/発行者:川口昭彦/デザイン:坂村健