東京大学総合研究博物館
標本資料報告 第75号

東京大学総合研究博物館 人類先史部門所蔵
八幡一郎「大型打製石器」関連標本
── 綴子・中山・鵜ノ木・菅谷 ──

中村真理・野口和己子・佐宗亜衣子・諏訪 元

はじめに

この標本資料報告は、東京大学総合研究博物館・人類先史部門所蔵の後期旧石器時代終末期~縄文時代初頭に属する大形打製石器を対象に、2006年から2007年にかけて実施されたキュラトリアル・ワークの成果報告書である。主眼となった特徴的な石器資料は、八幡一郎が「大形打製石器」として注目した、わずか約11点の石器である。これらは、旧石器時代に遡る可能性のある学史的資料として、当館人類先史部門所蔵の標本群において特徴的なものと位置づけされる。さらに、造形的に優れている点も、その魅力の一つと言えよう。

2005年12月6日、本資料報告書の主要著者である中村真理が綴子遺跡出土の大形打製尖頭器の閲覧ならびに調査に来館した。その調査がきっかけとなり、八幡一郎が「大形打製石器」としてかつて注目した石器資料について、人類先史部門のコレクションに同様の石器資料が他にも存在しないか、現状確認調査を実施する運びとなった。結果、「大形打製石器」に該当する石器資料として、綴子(秋田県)、中山(秋田県)、鵜ノ木(岩手県)、菅谷(新潟県)の資料が確認された。本標本資料報告書では、これらについて現存状況を確認し、さらには今回特定できた同遺跡由来の全標本資料の再検討に基づいたカタログを作成し、当館人類先史部門所蔵コレクションにおける八幡一郎「大形打製石器」資料の位置づけを明示することを目的とした。

本事業を実施するにあたって多くの方々・機関のご協力をいただいた。特に、綴子資料においては北秋田市教育委員会の榎本剛治氏に、鵜ノ木資料においては盛岡大学の熊谷常正、関西大学の山口卓也両先生に、菅谷資料においては新発田市教育委員会の鈴木暁氏に、それぞれご教示いただいた。標本の確認調査と整理・情報化などの実際の作業は、以下の方々によるものである:中村真理、野口和己子、佐宗亜衣子、尾田識好。実測図及び計測は中村真理、写真撮影は上野則宏によるものである。また、安斎正人、佐藤宏之の諸先生方には様々にご教示、ご協力いただいた。ここに謝意を表し、厚く御礼申し上げる。

2008年5月

諏訪 元(東京大学総合研究博物館)

2015年6月付記

中山遺跡の土器標本については幾つかの変更、訂正を加えて、 中山遺跡出土標本データベース に示している。

平成19,20年度科学研究費補助金使用

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