東京大学総合研究博物館 人類先史部門所蔵
中山遺跡出土標本データベース

上條信彦(弘前大学人文学部)

佐宗亜衣子・諏訪 元(東京大学総合研究博物館)

はじめに

東京大学総合研究博物館人類先史部門の収蔵資料に秋田県南秋田郡五城目町中山遺跡出土資料が50点ほど確認されている。これらは、石器標本の記載を中心に、資料報告第75号『東京大学総合研究博物館人類先史部門所蔵、八幡一郎「大形打製石器」関連標本、綴子・中山・鵜ノ木・菅谷』として出版されている(中村ほか2008)。この資料報告集の作成において、中村らは大正・昭和期の標本カードと現行の標本台帳など、調査当時に人類先史部門で把握していた標本付随情報を利用すると共に、標本棚の網羅的実見を行い、八幡一郎の「大型打製石器」(八幡1948)に関係する遺跡の出土資料をできうる限り抽出した。中村ほか(2008)には、中山遺跡出土資料として石器14点、土器32点、土偶・その他7点の計53点(現存48点、所在不明5点)のリストが、石器の写真とともに掲載されている。

中村はか(2008)の資料調査では、佐藤初太郎、村上嘉七、佐々木熊次郎、中村徳松らの氏名を標本カードなどに確認し、文献記載と照合し、本館収蔵の中山遺跡出土資料の大方は明治期の佐藤初太郎氏の調査・発掘に基づくものと推測された(村上嘉七、佐々木熊次郎、中村徳松らは佐藤初太郎の発掘を補助者として文献に記録されている)。中村ほか(2008)では、佐藤の調査時期については、明治34年(分銅・小野1955)もしくは明治40年(小野1975)の可能性があり「判然としない」とし、東京大学人類学教室に寄贈された経緯は不明としたものの、ある程度の一括性のある資料として位置づけされた。

今回は、上條信彦氏による新たな文献調査と中山遺跡出土標本の土器・土製品を中心とした再検討に基づき、東京大学総合研究博物館所蔵の中山遺跡出土遺物一覧(表1表2)を更新し、別項目のデータベース『中山遺跡出土標本』として公開することとした。本データベースでは、標本の来歴情報を向上し、さらには従来出土地不明とされていた3点を新たに中山遺跡出土資料として加えることができた。なお、標本の確認と整理情報化の作業は上條信彦、稲葉佳代子、佐宗亜衣子が行った。写真撮影は上野則弘によるものである。

2015年1月12日 諏訪 元・佐宗亜衣子

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