デジタルミュージアム3
日本では、明治時代まで、薬草を含め薬になる天然自然の産物を研究する学問を「本草学」といった。本草学の研究は広範囲であった。病気の見立て、薬の調合から実際に野外で薬草を探す採薬まで、薬にかかわる様々な研究が含まれていた。
日本において、江戸時代初期の本草学は明の李時珍の『本草綱目』を中心とした文献学・解釈学であった。日本の薬用植物を中国の本草書に記載された薬草に当てようとしたのである。日中の植物相には大きな相違があるとは考えなかった。
上野益三(1986年、京都大学名誉教授・動物学)の説によると、宝永五年(1708 年)に完成した貝原益軒の『大和本草』をもって、日本でも自らが植物を観察研究する時代に入った。益軒以後、多くの本草学者が、山中を巡りあるき薬効のある植物を発見することや今日の民俗植物学的資料の収集に努めた。
岩崎灌園の『本草図譜』は日本で最初の植物図鑑ということができる。植物を主体とし、その他に岩石や動物などを若干含んでいる。最初の数巻は版刻され出版されたが、ほとんどの巻は筆写され頒布されたため、現存する諸本には、出来不出来がみられる。東京大学理学部附属小石川植物園には、小石川植物園の名の入った用箋に描かれた、大変出来のよい筆写本は保管されている。この図譜では個々の植物画は必ずしも精密に描かれているとはいえないが、それぞれの植物の特徴を実によくとらえていて見事である。
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本データベースの構築には、平成12年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を使用しました。
本草図譜についてのお問い合わせは、東京大学大学院理学系研究科附属植物園 にお願いします。
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