李時珍(1518〜1593)

明時代の正徳十三年(1518年)、現在の湖北省で生まれ、万暦二十一年(1593年)に75歳で亡くなった。『神農本草経』以来中国での薬物学は大きく膨れ上り、扱う薬物の種類は極めて多くなった。その結果、名称の混乱や、誤った記載も生じた。そこで李時珍は、新たな本草の編纂を開始し、膨大な書物を分類して、薬物の形状や薬としての効用等を分析したり、自ら野山で調査・採集を行なった。

数年後に本草学の大著『本草綱目』の著作を開始し、27年をかけて完成させた。この52巻に及ぶ『本草綱目』には、1892種の薬、附方11916点が記されている。薬物は16部60類に分類して説明を加え、内容的にも豊富で分かりやすいものとなり、更に従来の文献の誤りを訂正している。万暦二十四年(1596年)に『本草綱目』が出版されてからは、貴重な文献として高い評価を得て、日本や朝鮮に伝わり、更にドイツ語やフランス語、ロシア語などにも翻訳されて、世界の植物学などの発展に寄与した。