複製を製作するにあたっては、オリジナルの現状を観察・記録し、併せて写真撮影を行ったのちに型取り作業に入る。まず、オリジナルに型取り材料(シリコーン)が直接触れないようにするため、錫箔を全面に隙間なく貼る。次に内型としてシリコーンを塗布し、さらにその上に外型として石膏あるいは樹脂を塗布する。このさい、必要に応じて補強材を併用し、型は大きく前後に分割できるように製作する。次に外型、内型を外してオリジナルを取り出し、清掃を行うとともに、型取り前との異常の有無を点検し、型取りとしてのオリジナル使用を終える。次の段階では、外型、内型からなる雌型に樹脂をガラス繊維とともに積層し成形を行う。硬化が終わったら雌型を取り外し、樹脂製の成形品を取り出す。成形品の型の合わせ目部分のバリなど、不都合な箇所の補正、補修を行い、仕上げる。彩色の段階では、樹脂用の塗料・顔料を使用してオリジナルと同様な色調感、材質感を再現する。 (京都科学) 34-1 旧東金堂本尊佛頭(奈良、興福寺蔵、国宝)(複製) 合成樹脂、グラスファイバー強化積層成形、高98.2、(株)京都科学製作、同上蔵 34-2 壷形土器(重文指定) 向ヶ岡貝塚(現東京都文京区本郷弥生町)出土、頚部径8.4、胴部最大径22.7、底部径8.5、高22.0、弥生時代後期(2世紀)、東京大学総合研究博物館人類先史部門蔵(DO.6990) 総合研究博物館に収蔵されている数多の学術標本のなかでも指折りの逸品である。本郷の弥生町の貝塚から掘り出され、「弥生土器」の命名の基になった第一号土器とされる。これまで三つの複製が製作されているが、それぞれ異なる意図、目的、時代に造られていることもあり、今回製作されたものを含めすべてを「複製」の一語で一括りにするわけには行かない。 34-3 同上(複製白生地) 合成樹脂、(株)京都科学製作、東京大学総合研究博物館人類先史部門蔵 着色がなされる前の段階を示す。 34-4 同上複製(レプリカ最終ヴァージョン) 合成樹脂、(株)京都科学製作、東京大学総合研究博物館人類先史部門蔵 2001年現在の「存在様態」を後世に保存するために造られた複製である。 |
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