様々な複製技術のなかで、かたちだけでなく成分までオリジナルに似せて造る場合には、「複製」と区別して「模造」という呼び方がされる。これを行うには、当然オリジナルの組成や構造についての基礎的な調査がなされていなくてはならず、「模造」の製作それ自体が研究成果に直結することになる。ペルー学者大貫良夫を団長とする東京大学学術調査団が1989年に南米ペルーのクントゥル・ワシ遺跡から発掘した金製副葬品は、その後の調査により紀元前800年頃に遡るものであり、アメリカ大陸最古の黄金製品としての歴史的・学術的な価値が極めて高い。材料の金は、おそらくアマゾン川上流域の砂金を使ったのだろうが、100パーセントの純金でないばかりか、パーツごとに純度に違いのあることが判明したため、その組成まで忠実に復元されている。 33-1 十四人面金冠(レプリカ) 金製、第一号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、長46.5、高18.0、現代、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 この豪華な金冠は墓に膝を抱えてしゃがんだ姿勢で埋葬(座位屈葬)された60歳前後の男性骨の傍らに副葬されていたものである。この人物は身長がおよそ154センチで、細身、筋肉質。歯槽膿漏であったと推定される。 33-2 五面ジャガー金冠(レプリカ) 金製、第二号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、長48.0、高13.5、現代、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 第二号墓から発掘されたさい、冠内部に頭骨が残っていたことから冠を戴いたまま埋葬されたものと推察される。葬られていたのは60歳を超える男性で、外耳道骨腫をわずらっていた。黄金の胸飾りを4枚も重ねていたことから、重要な人物であったことがわかる。 33-3 横顔ジャガー金製板状胸飾り二点(レプリカ) 金製、第二号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、長18.0、高9.5、現代、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 33-4 ジャガー双子金製胸飾り(レプリカ) 金製、第二号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、縦21.5、横14.0、現代、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 33-5 蛇目・角目ジャガー金製胸飾り(レプリカ) 金製、第二号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、縦17.5、横16.0、現代、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 33-6 金製耳飾り一対(レプリカ) 金製、第三号墓、クントゥル・ワシ期、紀元前800年頃、径7.0、高3.5、東京大学総合研究博物館文化人類部門蔵 第三号墓は30代から40代にかけての虫歯持ちの男性の墓で、耳朶に穿った穴に差し込むタイプの大型耳飾りを着けていた。 |
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