第2章

時空間エクスペディシオン−戦後




東京大学が派遣した戦後最初の大規模海外調査は、一九五六年、東洋文化研究所の江上波夫教授が率いた中近東の考古美術調査であった。この調査と、それに続いて、やはり全学事業として派遣されたアンデス地帯学術調査、ヒマラヤ地帯植物調査、西アジア化石人類調査の成果をここでは紹介する。現在も続くこれら四つの大型調査が招来した莫大な標本・資料群は総合研究博物館中核資料の一つとなり、文明起源や生物進化の問題を具体的に研究するための世界有数のコレクションを形成している。

第二次大戦後の海外調査には以前とは本質的な違いがみられる。敗戦のためフィールドが変化したことはもちろん、地理的探検は完全に終了し、目的的学術探検が推進される時代となった。また、日本との関係を論じることだけでなく、文明や自然の摂理という人類共通のテーマを掲げた海外調査が増加している。




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