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「石の記憶」展は「ディスプレイデザイン企画・研究特別賞」も受賞し、さらに日本ディスプレイ業団体連合によって「ディスプレイ産業特別賞(日本経済新聞社賞)」にも選出されました。
ディスプレイデザイン賞は、日本ディスプレイデザイン協会によって選定される「デザイン」に対して与えられ、商品の陳列・展覧会場の造作などの空間デザインから看板・ネオン広告などのサインデザイン、さらに博物館・テーマパークなどにおけるあらゆる展示が対象になっています。空間環境系の優秀な作品を評価、公表し、ディスプレイ分野における新しい作家の発掘と、デザイン活動の向上、領域拡大を目指すことを目的とした賞です。応募作品の中から特に優れた作品を「優秀賞」として選定し、さらにその中で最も優れた作品に対して「ディスプレイデザイン大賞」が贈られます。2004年には約600点の応募作品が全国から寄せられました。
またディスプレイ産業賞は、日本ディスプレイ業団体連合によってディスプレイの創造力、技術力の向上とディスプレイ産業振興のために設けられた賞です。表彰対象となるのは、ディスプレイデザイン賞入賞候補作品のうちディスプレイ産業振興の見地からディスプレイデザインが優秀であることに加えて、ディスプレイ産業振興(博覧会、展示会、博物館、店舗、催事等の効率と機能を高める企画・設計・演出・展示構成・製作施工監理等の技術力、業務水準の向上)に寄与すると認められる作品であることとなっています。
「ディスプレイデザイン大賞」は、展示に関わる者が一度は受賞を夢見る賞であり、その受賞は最高の栄誉です。最近の4年間でも、2000年は竹中大工道具館の企画展「ヒトと手道具」、2001年は日本新聞博物館、2002年は「第35回東京モーターショー“日産”ブース」、2003年は「スタイル本社ビル・サイン」と、企業を中心とした展示デザイン、サインなどが受賞しています。
このような状況の中で、総合研究博物館の展示が、大賞はじめ優秀賞、企画・研究特別賞を受賞したことは、総合研究博物館の公開展示活動が、いわば完全な第三者による外部評価を受け、そこで高く評価されたことを意味しています。社会からの高い評価は総合研究博物館ばかりでなく東京大学にとって極めて意義深いと考えます。
受賞の理由には、「学術的なテーマ性と試料体、試料に傾注された研究者の意欲、そしてそれらを表現する芸術的なデザインが一体となった大学博物館ならではの傑出した展示であった」とありました。大学博物館としての博物館を追求している総合研究博物館にとって、この受賞理由は、最大の褒め言葉であると思います。
「石の記憶」展も「シーボルトの21世紀」展も寄附研究部門である「ミュージアムテクノロジー」研究部門の全面的な協力のもとにデザイン・設計・実施が行われました。この寄附研究部門は、株式会社丹青社の寄附で設けられた総合研究博物館の研究部門です。寄附研究部門「ミュージアムテクノロジー」との協働の成果が受賞したことも、総合研究博物館にとって大変に喜ばしいことです。特に、「ディスプレイ産業特別賞」の受賞は、いわば産学連携の成果であると評価されます。
これらの受賞には、多くの方々の協力がありました。特に両展示の「学術的なテーマと融合した芸術的なデザイン」を担当された「ミュージアムテクノロジー」の洪恒夫氏の貢献は特筆すべきものでした。丹青社はもちろんのこと、図考館(杉谷進、飯沼香里、飯田光子)、Yellow Two(渡辺ゆかり、半田大輔、安竹治、山田矩子)、南雲デザイン(南雲美恵、吉原美佐子)、小材敏彦、関岡裕之、奥村浩司の皆様に心からの謝意を表します。最後に、上に掲げた方々以外に両展示に関わられた方々の名前を挙げて展示企画者(大場秀章、田賀井篤平)の謝意を表します(敬称略)。
「21世紀のシーボルト」展:Peter Baas, David E. Boufford, Cor Prins, Gerard Thijsse, 秋山忍、飯田美奈子、石田裕美、岡田美知子、加藤僖重、佐藤真理子、清水晶子、滝沢糸子、谷川愛、宮崎勝美、濱田彩、渡辺勝一
「石の記憶」展:石田裕美、菊地誠、玄蕃教代、佐藤真理子、高倉淳子、橘由里香、谷川愛、玉川万里子、山崎秋子、渡辺顕
(本館教授/博物資源開発研究系)
Ouroboros 第25号
東京大学総合研究博物館ニュース
発行日:平成16年9月15日
編集人:佐々木猛智・高槻成紀/発行人:高橋 進/発行所:東京大学総合研究博物館