今年4月より、国立大学は国立大学法人となり、新しい設置形態と制度のもとで研究教育を推進していくことになりました。開闢以来ともいえる大改革のなかで未だ見通しが不透明なところもありますが、これから大学がさまざまな点でパワーアップしなければならないことは確かだと思います。国立大学の博物館もこの改革の渦中に置かれていますが、東京大学の総合研究博物館がこれから目指したいと考えている目標をいくつか指摘させていただいて、大学博物館への各方面からの一層のご支援・ご協力をお願いしたいと思います。
大学博物館として何よりも研究教育が使命であることには変わりはないと思います。この点だけでも相当のエネルギーを必要とする訳ですが、従来以上に異なった形での推進が求められています。学際、学融合等という形で研究教育の新しい型が試みられてきました。大学博物館はそもそも多分野複合型ですので、この長所をさらに生かして、さらなる新しい型を模索していきたいと思っています。
さらに、博物館のもう一つの使命として展示があります。どのような展示を行うかはその大学博物館の特性によって異なるかと思いますが、いま以上に展示の意匠で工夫する必要があるのではないかと思っています。来館していただく方々に一層の感動と興奮をもっていただき、加えて研究教育に対する深い理解を有していただくために、努力を積み重ねる必要があることは言うまでもないことと考えています。
大学を取り巻く環境が大きく変化し、それに伴い大学博物館のそれも様変わりしようとしています。これから大学の社会貢献や地域貢献が大きな課題になることは間違いがありません。そのなかで大学博物館の重要な一翼を担うことになります。そのとき、大学博物館が社会貢献の内容を画一的に考えるのではなく、個性ある中身を打ち出すことが肝要であるといえます。激動の時代は続きますが、大学博物館相互に切磋琢磨しながら、さまざまな課題を達成していきたいと思います。
(たかはし・すすむ、本館館長)
Ouroboros 第24号
東京大学総合研究博物館ニュース
発行日:平成16年4月24日
編集人:高槻成紀/発行人:高橋 進/発行所:東京大学総合研究博物館