平成14年7月27日から約1年間続いた常設展「クランツ標本」展が6月20日に無事終了しました。クランツ標本は、東京大学が開成学校、東京開成学校と呼ばれていた明治初期に、世界的に著名なドイツの標本商であったKrantz商会から購入されたもので、総点数は12000点に達します。明治6年に開成学校が誕生し、鉱物学や地質学の教育が行われましたが、外国から購入した約150点の鉱物標本とロイニース著「博物学」が一冊しか備え付けられていなかったと伝えられています。明治7年、開成学校は東京開成学校となり、クランツ標本などの標本や書籍が多数が購入されました。クランツ標本は、日本最初の大学における教育現場の第一線で活躍し、教育研究の基盤形成に貢献した標本群と考えられます。今回の展示は、明治初期という日本の鉱物学・地質学の黎明期に、学問そのものであったクランツ標本群の総覧を通して、少数のエリート学生に対して行われた教育と、そこから生み出された近代的研究の係わりを総合研究博物館という場を通して明らかにする目的で企画されたものでした。
本展示にご協力を戴いたクランツ商会、日本板硝子をはじめ総合研究博物館の皆様に心から感謝いたします。
特別展「ニュートリノ」展が6月20日に無事終了しました。小柴先生のノーベル物理学賞受賞が報道されたのは10月8日でした。この報道の直後にニュートリノ展の開催が決定され、僅かな準備期間で特別展を企画して立ち上げることになりました。ちょうど途中に年末年始の休みが入ってしまい十分な準備期間を取ることができず、展示をご覧になった皆様に満足していただけたか不安ですが、多くのマスコミに取り上げられ、大学の社会貢献に少しはお役に立てたのではないかと考えております。
この展示は、素粒子物理学というモノよりも理論の世界をどのように見せるのか、という実験的な要素を多く含んでいました。展示には研究内容ばかりでなく小柴先生の個性を浮き上がらせたいと考えてインタビューをお願いしたところ、快くお引き受け下さいました。先生は、ユーモアを交えながら基礎科学の大切さ、研究者として磨かなければいけない感性、などなど、非常に示唆に富んだお話してくださいました。このインタビューを会場で放映したところ大変に評判がよく、あちこちからインタビュービデオを貸して欲しいとの話が来ております。展示では、科学者の抱く研究に対する感性と情熱、また巨大な装置を計画から完成に導く様子をも伝えることができるように努めました。小柴先生が言われる「基礎科学の重要さ」とその魅力を感じ取って戴けたでしょうか。
本展示には小柴昌俊先生、宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設の鈴木洋一郎教授、大学院理学系研究科物理学専攻の蓑輪眞教授の全面的なご協力を得ることができました。今回の展示はお三人のお力添え無くしては不可能でありました。心から御礼を申し上げます。また、図録作成には高エネルギー加速器研究機構の戸塚洋二教授や大学院理学研究科の駒宮幸男教授がお忙しい中にもかかわらず、ご執筆くださいました。また、臨時に特別展を行うに当たって、経理部、総務部、広報委員会にご尽力をいただきました。改めて御礼申し上げます。
この展示を行うに当たって、ご協力をいただいた神岡鉄道株式会社の小長井憲二さん、元神岡鉱業の小松弘さんに心から感謝申し上げます。また、展示企画から設営まで献身的に支えてくださいました、洪恒夫助教授、石田裕美さん、玉川万里子さん、橘由里香さんはじめ総合研究博物館のスタッフの方々に謝意を表します。今回の展示にあたっても下記の博物館ボランティアの方々のご協力を頂きました.厚くお礼申し上げます。飯干ユミ、伊藤道子、鵜原一彦、岡村幸子、沖川康子、兼中雪絵、神田理子、木全功子、国近尚三、熊谷昌子、小久保恭子、斉藤春江、斉藤庸子、坂井千里、佐藤和子、鈴木治雄、住田美和子、竹ノ内育子、冨森孝子、中島久美子、福田稔、渕上妙子、舩窪英子、星佳子、堀井美喜雄、堀江千江子、松山薩男、馬渕恵子、三浦由喜子、三好史郎、森下研子、柚木陽子。
特別展「ニュートリノ」展は6月20日に終了しましたが、引き続き巡回展を行うことになりました。総合研究博物館が今回のニュートリノ展に対して設定したコンセプトは『科学者の抱く研究に対する感性・情熱と巨大な装置を計画から完成に導く様子を伝え、小柴先生が言われる「基礎科学の重要さ」とその魅力を感じ取ってもらう』でした。このコンセプトは、非常に汎用的で、展示を通じてできるだけ多くの人々に伝えたいと考えておりました。そのために、設計段階から展示を巡回展にモデルチェンジできるように、展示構成のモジュール化設計、柔軟性に富んだ展示具の開発などを行って来ました。1200×2400mmのパネルを将来的にも柔軟な活用・容易な増設ができるように仕様を決定しました。パネルにはスポットライトの取り付けやピクチャーレールの取り付けも考慮しました。その結果、ニュートリノ展のコンセプトを崩すことなく、それぞれの展示会場の環境に対応して巡回展を行うことができます。
先ず、糸魚川市立フォッサマグナミュージアムが開催に手を挙げ、新潟県や糸魚川市の支援を受けて、7月4日から9月7日の期間で、「東京大学巡回展・ニュートリノ展」を開催します。また、横須賀市からも小柴先生とのご縁もあり、8月1日から8月10日の期間で横須賀市自然・人文博物館との共催で「東京大学巡回展・ニュートリノ展」を開催したいとのお話がありました。糸魚川と横須賀の同時開催ですが、展示物をうまく調整して、東京大学巡回展の名に相応しい内容にするつもりです。また、9月以降も、いくつかの機関から巡回展開催の打診が来ています。これが、総合研究博物館の企画が巡回展として全国をめぐるきっかけになればと思っております。
2003年1月16日から6月20日まで行われてきた「痕跡の考古学」展は終了しました。関連する記事は「ウロボロス,5-3」(2001年5月10日)及び「ウロボロス,7-3」(2003年9月20日)に掲載してあります。当館のホームページからご覧になってください。
2002年12月7日より2003年3月2日まで小石川分館において行われました「MICROGRAPHIA—マーク・ダイオンの『驚異の部屋』」の展示開催にあたって下記の博物館ボランティアの方々にご協力頂きました。厚くお礼申し上げます。飯干ユミ、伊藤道子、鵜原一彦、岡村幸子、沖川康子、兼中雪絵、神田理子、國近尚三、熊谷昌子、小久保恭子、斉藤春江、斉藤庸子、坂井千里、佐藤和子、鈴木治雄、住田美和子、竹ノ内育子、冨森孝子、福田稔、渕上妙子、船窪英子、古川万理、星佳子、堀井美喜雄、堀江千江子、松山薩男、馬渕恵子、三浦由喜子、三好史郎、森下研子、柚木陽子。
事前に申込のあった主な来館者(平成15年1月17日〜6月12日)は以下の通りです。本館:「第5回日本語コミュニケーションin大韓民国」入賞者、中南大学、大一外国語高等学校生及び教師、大阪大学事務官、サハリン国立総合大学学長、岐阜女子大学博物館見学実習、ナジャーハ・アッタール「文明・国際関係研究所」設立委員長(シリア・アラブ共和国元文化相)一行、台湾論説委員、北海道大学総合博物館、時殷弘(中国人民大学国際関係学院教授兼米国研究所主任)、アメリカオハイオ州シンシナティ大学、順天中学校社会研修、シンガポールマネージメント大学・松下電器産業株式会社等、豊栄市立早通中学校、大野村立大野第一中学校、郡山市立緑ヶ丘中学校、福島県石川郡玉川村立泉中学校、故宮博物院考察団、日本バーチャルリアリティ学会第6回VR文化フォーラム2002、八戸市立根城中学校、東京大学教育学部附属中等教育学校1学年、ロシア代表団、一関市立山目中学校、富山県八尾町立杉原中学校校外実習、高齢者学生会、倉敷市立連島南中学校、仙台市立鶴谷中学校、兵庫県三原郡広田中学校、京華中学校校外授業、愛知県碧南市立東中学校、東北大学附属図書館職員、愛知県西尾市立平林中学校、彦根市立稲枝中学校、彦根市立中央中学校。
小石川分館:お茶の水女子大学附属小学校3年生、5年生、月刊ミュゼ・カリフォルニア・アカデミー、吉川弘之元総長、北海道大学総合博物館、愛知県豊橋市立章南中学校、三重県藤原町立藤原中学校、伊勢崎市立第二中学校。
現在の博物館の専任スタッフは以下の通りです。
館長
高橋 進(大学院法学政治学研究科教授・政治外交史)
研究部
キュラトリアル・ワーク研究系
教授 大場秀章(植物分類学)
助教授 高槻成紀(動物生態学)
助教授 諏訪元(形態人類学)
助手 佐々木猛智(動物分類学)
博物資源開発研究系
教授 田賀井篤平(バイオ鉱物学)
助教授 西秋良宏(先史考古学)
博物情報メディア研究系
教授 西野嘉章(博物館工学)
助手 鵜坂智則(情報科学)
助手 藤尾直史(建築史学)
ミュージアム・テクノロジー寄附研究部門
客員教授 神内俊郎(情報工学)
客員教授 菊池 誠(建築設計)
客員助教授 洪 恒夫(展示デザイン)
放射性炭素年代測定室
助手 吉田邦夫(年代学/考古化学)
事務部
博物館総務主任 砂子田美代子
博物館情報掛
事務官 高松 宏
事務官 柳川圭介
事務官 原田園子
技術補佐員 冨田綾子
事務補佐員 谷川 愛
事務補佐員 片岡 最
公開事業掛
掛長 田中 透
掛主任 磯山 勉
事務官 田嵜洋恵
事務補佐員 金杉千絵
Ouroboros 第21号
東京大学総合研究博物館ニュース
発行日:平成15年7月15日
編集人:高槻成紀/発行人:高橋 進/発行所:東京大学総合研究博物館