地史古生物部門に保管されている標本類は、大別すると、
の3つに分けられる。 このうち 1 の登録標本と 2 のクランツ標本・現生貝類標本は 博物館2・3階の標本室におさめられ、 本館客員研究員である市川健雄氏の献身的な御努力により キュレーティングが行われている。記載標本として保管されている標本類、 ならびに研究中の未登録標本類は主として過去約120年間に理学部地質学教室 (現大学院理学系研究科地質学専攻) の教職員、学生によって採集され、 研究されたものである。 戦時中には地質学教室の疎開とともに、 この大量の標本類も戦火を逃れて山形県下石田に移されたと聞いている。 総合研究資料館の設立 (昭和40年) 以来、これらは同教室から移管され、 整理作業が続けられてきた。
登録標本の価値は、単に研究論文が出版され、 その議論のもととなる証拠品として保管されているのみにとどまらない。 毎年、国内、海外から登録標本の観察、計測などの目的で来館する訪問者は 多数にのぼる。 また、郵便による標本の送付依頼にも可能な限り応じている。 このように登録標本の利用価値は非常に高い。
主な登録標本には、
これらの標本はすべて公共の財産であり、 記載標本・参考標本は再検討や比較研究のために来訪する研究者に、 可能な限りいつでも公開されるべきものである。 また、たとえ記載者や採集者であっても勝手に持ち出したり処分することは 許されていない。
市川健雄・速水格 (1978)
東京大学総合研究資料館地史古生物部門所蔵タイプおよび図示標本目録 第1部 古生代および中生代化石
東京大学総合研究資料館標本資料報告 第2号市川健雄 (1983)
東京大学総合研究資料館地史古生物部門所蔵タイプおよび図示標本目録 第2部 新生代化石および現生標本
東京大学総合研究資料館標本資料報告 第9号市川健雄 (1988)
東京大学総合研究資料館地史古生物部門所蔵タイプおよび図示標本目録 第3部 補遺 (1)
東京大学総合研究資料館標本資料報告第15号市川健雄 (1995)
東京大学総合研究資料館地史古生物部門所蔵タイプおよび図示標本目録 第4部 補遺 (2)
東京大学総合研究資料館標本資料報告第33号
棘皮動物の1グループである有柄ウミユリ類は、 白亜紀中頃 (約1億年前) までは浅海に多数生息していたが、以降、 捕食者の増加によって深海へ追いやられてしまったと考えられている。 この例は世界的に見て、 もっとも最後まで浅海に残っていた有柄ウミユリ類の一例である。 岩手県下閉伊郡田野畑村、宮古層群平井賀層産、Isocrinus hanaii。
生物体を構成する主要な分子は、核酸、タンパク質、糖質、脂質などである。 これらはいずれも、断片的であるにせよ、 分子化石として様々な種類や時代の化石や地層の中に残される。 特に、情報高分子と呼ばれる核酸とタンパク質の化石は、 絶滅生物の系統関係の推定に利用されてきた。 画像は、喜界島湾層産 (約8万年前) の腕足動物 Kikaithyris hanzawai の化石標本 (サンプル番号UMUT CB18196) で、 炭酸カルシウムからなるこれらの殻の中にも、 現生種と同様のタンパク質が残されていることが、 抗体を用いた研究から明らかとなった。
詳細は、デジタルミュージアム
「動く大地とその生物」の
「キカイチリス」
の項*を参照して下さい。*東京大学総合研究博物館データベースのサイト内に再構築されました。(2017年2月 記)
アンモノイド類の胚殻化石群 (Tanabe et al., 1993)
米国カンザス州の上部石炭系 (約3億年前) 産
東京大学総合研究博物館地史古生物部門収蔵標本 (UMUT PM 19013)
孵化直後のアンモノイド (Cravenoceras sp.) の幼殻
(Tanabe et al., 1995)
米国テキサス州の下部石炭系 (約3.3億年前) 産
東京大学総合研究博物館地史古生物部門収蔵標本 (UMUT PM 19330)
矢印は孵化直後の殻にできたくびれを指す
卵殻中で発育中の現生オウムガイ類 (Nautilus macromphalus) の胚
鳥羽水族館提供
孵化直後の現生オウムガイ類 (N. macromphalus)の幼体
鳥羽水族館提供
詳細は、デジタルミュージアム
「動く大地とその生物」の
「生きた化石 オウム貝類」の項*を参照して下さい。*東京大学総合研究博物館データベースのサイト内に再構築されました。(2017年2月 記)
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