本データベースにおけるデータシートの各項目は以下の定義のもとに記載した。
本館の標本資料報告No.3における登録番号を表わす。本整理作業はこの登録番号に基づいて行なわれ、新規の登録番号は設けなかった。ただし、まとまりのある別個体が同一登録番号の標本中に存在する場合は、131052(第2個体)のようにカッコ内に第~個体と付記し、新たなデータシートを作成した。
標本が属する遺跡名称。ここではふたつの名称を併記した。ひとつめには、標本資料報告No.3の採集地欄にある遺跡名(ない場合は標本名の名称部)を記した。ただし今回新たに記録した計15標本は「未登録」とした。ふたつめには、実際に標本が由来すると考えられる遺跡名(現在使用されている遺跡名、もしくは最も妥当と思われる名称)を示した。
標本が属する時代。早期・前期・中期・後期・晩期とする時代区分のうち、各遺跡の主な出土人骨が属するとされている時代を記した。ただし標本によっては、土器編年を用いた縄文時代内の時代区分が出版文献中に明記されている場合がある。これについては年代情報の項目に記した。
標本資料報告No.3中の標本名を表わす。ただし今回、堀之内貝塚、加曽利貝塚、古作貝塚、守谷・興津海食洞穴群、長者町、台門貝塚、紙敷貝塚の遺跡において計15標本を追加しており、これらについては付属する標本カードの記述や標本自体に記された番号などを基に標本名を設定した。
これらは、標本資料報告No.3の作成以前に使用されていた番号であり、それぞれ小金井良精、長谷部言人、鈴木尚、埴原和郎、馬場悠男による。標本資料報告No.3中の備考欄に記されている番号を表わす。
標本資料報告No.3中の備考欄を原文のまま表わす。
標本の出自を明確にする出版文献が存在する場合、その著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。また調査、発掘、出土状況等に関する文書保存資料が本館に所蔵されている場合は「保存資料」と記す。
上記報告内でこの標本に付けられている番号、特に発掘時の番号を表わす。
発掘の代表者もしくは調査者・団の名称を表わす。
出版文献中に、この標本が出土した地区・地点の情報が明記されている場合は、その地区・地点名とともに、その著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。本館所蔵の保存資料中に見られる場合は「保存資料」と記す。
出版文献中に、この標本の実測図が存在する場合は、その著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。本館所蔵の保存資料中に見られる場合は「保存資料」と記す。
出版文献中に、この標本の出土状況の写真が存在する場合は、その著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。本館所蔵の保存資料中に見られる場合は「保存資料」と記す。
出版文献中に、この標本に関して、土器編年を用いた縄文時代内の時代区分が明記されている場合は、その時代区分とともに、著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。本館所蔵の保存資料中に見られる場合は「保存資料」と記す。
出版文献中に、この標本の形態や計測値が記載されている場合は、その著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。
頭骨の保管所在を表わす。破片がひとつでもあれば「頭骨ケース」「平箱」のいずれかを記し、ない場合は「なし」とする。
歯の有無を表わし「あり」「なし」のいずれかで記す。保存の良好な歯根だけの場合も「あり」とする。
寛骨の形態から判断できる場合のみ「男性」「女性」のいずれかで記す。寛骨が複数重複している場合は性別とともに個体数を併記する。
Ubelaker(1989)page 64のFigure 71を用いて、歯の形成・萌出状況による年齢推定を行なう。ただし、年齢推定が図の中間になる場合は繰り上げて記し、6歳以上は「6+」とする(成人も含む)。また歯がない場合であっても、顎骨の歯槽が保存されていればそれに基づいて記す。重複する顎骨の場合は、たとえば「重複(6+, 5, 1)」のように各年齢を記す。混入した顎骨の場合は年齢推定の対象としない。遊離歯については、主要個体骨群に属する場合は年齢推定の参考に加えるが、そのように想定できない場合は年齢推定に用いない。
Krogman(1962)page 33のTable 5をもとにして、骨端の癒合状況による年齢推定を行なう。対象とする骨端とその癒合年齢としては以下のものを用いる。
clavicle sternal end | 25-28 |
prox humerus | 19-20 |
dist radius | 18-19 |
dist ulna | 18-19 |
prox femur | 17-18 |
dist femur | 17-18 |
prox tibia | 17-18 |
prox fibula | 17-18 |
dist tibia | 15-16 |
dist fibula | 15-16 |
humerus med epicondyle | 15-16 |
metacarpal | 15-16 |
metatarsal | 15-16 |
hand phalanges | 15-16 |
dist humerus | 14-15 |
prox radius | 14-15 |
prox ulna | 14-15 |
calcaneus | 14-15 |
foot phalanges | 14-15 |
pelvis primary elements | 13-15 |
保存されている部位全てが癒合している場合はその中で年齢の最も高いものを、全て癒合していない場合はその中で年齢の最も低いものを用い、たとえば「prox humerus 20+」や「dist tibia 15-」のように根拠を挙げる。癒合と未癒合の部位が混在する標本ではその中間値を記し(0.5は繰り上げ)、たとえば「19(prox humerus, prox tibia)」のように根拠となった部位を年齢とともに併記する。複数の年齢群から構成される重複の場合は、たとえば「prox humerus 20+, calcaneus 14-」のように必要に応じて最大値と最小値を記す。
標本に関する特記事項。学史的な意義、文献中で指摘された病変や損傷など。文献から引用する場合は著者名(もしくは文献名)および出版年を記す。本館所蔵の保存資料から引用する場合は「保存資料」と記す。
標本の混入や部位の重複などに関する参考情報、判断根拠を記す。特に「混入」「重複」は以下のように定義し、記載する。「混入」とは、主要個体骨群が特定できる場合、明らかにそれとはサイズや形態などが異なる別個体の遊離骨を指す。この場合、整理備考に主要混入骨を3個程度まで記し、保存状況図には記入しない。「重複」とは、複数個体が含まれるが各個体骨群に十分な信頼度で分別できない状態を指す。この場合、整理備考に最大重複個体数およびその判断根拠となった部位を記し、保存状況図は集合体として記入する。複数個体分からなる「重複」では成人と若年の混合もありうる。
また歯種別の数を記す。個体標本の場合はdi, dc, dm, I, C, P, Mの数を各々記す。このとき上下顎の区別、歯種の詳細は示さない。混入や重複する歯がある場合は、混入・重複込みの総数を個体標本の場合と同様に記すが、カッコ内に重複・混入の状況を併記する。
標本の保存状況図は以下の基準により記載した。頭蓋骨の破片のうち、5cmから10cm程度残っている同定可能な骨を記入。椎体と椎弓からなる椎骨片を±1程度の位置同定で記入。肋骨は記入しない。関節部が大部分残っている長管骨(中手骨・中足骨を含む)を記入。骨幹が半分程度残っている主要四肢長管骨を記入(鎖骨を含むが中手骨・中足骨は含まない)。左右が同定できる手根骨、足根骨を記入。指骨は記入しない。座骨、恥骨、腸骨、仙骨、肩甲骨の破片のうち5cmから10cm程度の大きさとして残っているものを記入。
1962 | The Human Skeleton in Forensic Medicine. Springfield, Charles C. Thomas. |
1989 | Human Skeletal Remains: Excavation, Analysis, Interpretation. Washington D.C.,Taraxacum. |