東京大学総合研究博物館に収蔵されている縄文時代人骨は、本館標本資料報告第三号、「東京大学総合研究資料館収蔵日本縄文時代人骨型録」に掲載されている。この資料報告を作製する過程で、収蔵標本に系統だった登録番号が付され、24都道府県、123遺跡にわたる2434標本として登録されている。この資料報告は、出版以来の20余年間、当コレクションの効率的な管理運営および研究利用の促進に役立ってきた。
この度は、上記の縄文時代人骨カタログをさらにアップグレードしながら、電算データベース化を実行することとした。その際、人骨コレクションの整理・管理状況を更新し、各標本の現存状況を記録し、標本および関連の基礎情報を系統だって再編することとした。その一環として、人類先史部門に収蔵されている未発表の発掘記録や古写真などを整備し、これらをデータベース情報の中に取り込み、標本群ごとの収集経緯の概要をまとめることとした。
この系統だった整理・電算データベース化事業は現在も進行中であるが、その成果の一部は既に本館資料報告第52号(保美)、第54号(姥山)として出版した。今回は千葉県の遺跡のうち、姥山貝塚、矢作貝塚、余山貝塚、ならびに縄文時代早期とされている向ノ台貝塚などを除いた19遺跡(うち7遺跡は今回新たに人骨を記録した遺跡である)の人骨資料について報告する。
データベースの形式は基本的に前回と同じであるが、今回さらに「遺跡名称」の表記を下記のように統一した。まずは遺跡名称として、本館標本資料報告第三号の採集地欄にある遺跡名(ない場合は標本名の名称部)を記した。ただし今回新たに記録した標本では「未登録」とした。次に上記の採集地遺跡名と併記するかたちで、実際に標本が由来すると考えられる遺跡名(現在使用されている遺跡名)を示した。遺跡の掲載順序は原則として標本資料報告第三号のものと同じにした。
本資料報告は、筆者らと坂上和弘、松川慎也、桑村和行、斎藤拓弥、中島雅典、金森雄輝、加藤久雄の標本整理作業によって可能となった。東京大学の高橋昌子氏、近藤修氏、山崎真治氏には様々にご教示いただいた。市立市川考古博物館の領塚正浩氏、堀越正行氏には堀之内貝塚と曽谷貝塚について、船橋市教育委員会の中村宜弘氏と白井太郎氏には前貝塚と古作貝塚についてご教示、ご指導いただいた。千葉県文化財センターの大内千年氏、下総考古学会の湯浅喜代治氏と大村裕氏には紙敷貝塚について、千葉大学の松井朗氏には守谷・興津海食洞穴群についてご教示いただいた。ここに謝意を表し、厚く御礼申し上げる。
2005年12月
諏訪 元
平成16,17,19年度科学研究費補助金使用