万人が納得のいく説明ができれば、人類学ノーベル賞がとれます(そのような賞はありませんが)。直立二足歩行がどう役立っているのか見ることで、従来から様々な説明がなされてきましたが、どれも最初の原因を説明するには弱いものです。例えば、見晴らしがよくなるとか、採食時に手が届きやすくなるとか、エネルギー効率がよいとか、体温調節に有利だった、などといった説明です。手が自由になる、との理由はもっともですが、そもそも何をするためだったのかが問題です。類人猿はひょこひょこと上手に歩きます。道具もそれなりに使います。では、類人猿以上に上手に二足歩行し、筋骨格系までを大幅に構造改革する必要がなぜあったのでしょうか?
日本では(も?)あまり人気がない説のようですが、米国のラヴジョイという研究者の面白い説があります。直立二足歩行はペア型の繁殖形態と共に進化しただろう、との説です。環境がしだいに不安定になっていった中新世の時代、例えば1000万年前ごろのことです。オナガザル類が躍進を遂げ始めたころでもあります。オナガザル類は類人猿よりも繁殖率が早く、また葉っぱを消化する特殊な胃や、頬袋といって一時的に食物をためておくパウチなどを進化させたりして、盛んに種分化したり、