エチオピア高原、3000メーターの高地からアファールの低地を望む。
1993年1月5日撮影
エチオピア高原、3000メーターの高地からアファールの低地を望む。
1993年1月5日撮影
いくつもの断層崖の経、段階的に500メーターまで下りてゆく。
1992年11月28日撮影
1992年11月の末、オフロード車ですら、この地を訪れるのが10数年ぶりだったのか、轍の痕跡ひとつない平原だった。
地形が変わり、車の走行が突然妨げられることしばしば、たよりは空中写真と現地の案内だった。
1992年11月28日撮影
ここはアファール民族の遊牧民の地、スカイラインには3000メートルの高原の稜線がかすかに連なる。
1992年12月2日撮影
アワッシュ川の本流以外に、水のながれはない。 そうした干上がった支流の川辺の木立に日陰をみつけ、ほこりの少ない場所に簡単なキャンプをはる。
1993年1月3日撮影
水の確保がとにかく問題だ。まずは現地の遊牧民と同様、川底を掘り、水場を作る。やがてそれも干上がってゆく。
1992年12月10日撮影
露頭調査の合間、ラクダを率いた一行に出会った。
クラン間の結婚があり、そのためのプレゼントのラクダとのことであった。民族間の抗争が耐えない地であり、皆、銃をもっている。
1992年12月6日撮影
堆積物はいたるところに断続的に露出している。
アファール民族の女性と小屋のむこう、遠方に見えるのは低い火山性の隆起。
その周辺には目指す500万年前前後の地層と化石がある。
1993年1月4日撮影
火山岩の直下の赤茶けた地層、熱変性した堆積層である。
この火山岩は玄武岩質の溶岩流、アルゴン・アルゴン年代測定で約520万年前のものとわかった。
1992年12月4日撮影
地表を注意して歩くと、様々な化石が目に入る。
自然の侵食によって表面に散らばったもの、まさに出土しかけているもの、様々である。
一定の基準で化石を採集し、出土地点と層序などを記録する。高台を上り下りし、空中写真における位置を決める。当時、精度のよいGPSはまだなかった。
1992年12月4日撮影
地点によって様々に化石が露出している。
ゾウ類、カバ、イノシシ類などの大型獣が目に入りやすい。
1992年12月3日撮影
広大な荒地を探査し続け、有望な化石の産出地点、
望むらくは人類化石の発見まで辛抱しなければならない。
よりまれな食肉類やサルが見つかると、にわかに人類化石発見の期待も高まる。
1992年12月6日撮影
12月に入り、アラミスという場所の調査を始めた。
年代は、500万年前ごろの火山岩の上、おおよそ400から500万年前との予想であった。
まずは下見である。ざっと化石密集の有無などを調査し、
今後の方針を決めてゆく。一見すると断片的な骨片しか目に入らない。あまり有望ではなさそう・・・。
1992年12月18日撮影
エチオピア人のベテラン調査隊員のアレマイユ氏がサルの顎の化石を発見した。彼は、かつて1970年代、ルーシー発見の調査地で大活躍した人だ。
1992年12月15日撮影
その現場に行き、研究者5、6名からなる調査隊員全員で浜辺を探索した。 すると、臼歯の根の先端らしき、薄茶色の丸みが、わずか石の合間から覗いていた。その小さな石塊を拾い上げ、逆さにするとラミダスの上顎第3大臼歯だった。
翌朝、皆で現場に戻った。前日発見した数点の人類化石のまさにその地点に旗印を立て、あたりの堆積層をくまなく探索する。12月18日の早朝の写真である。アラミスの調査地は、実は化石の宝庫だった。
なぜなら、堆積層の中に、古地形面そのものに相当するものがあったからだ。
だが、ルーシー発見の地と異なり、目立つ化石の密集はなく、小動物など、様々に小さな化石が出土する。中でも樹上性の小さなサルの化石が多い。
1992年12月18日撮影
化石は多くの場合、マトリックスといって、石灰質や堆積岩が大なり小なり付着し、カモフラージュ効果が甚だしい。
わずかな形の目印を識別し、揺るぎない集中力を維持しつづけ、見つかるはずもない人類化石の発見にいたる。
1992年12月18日撮影
ここにサルの顎の良好な化石があった。 もし、ラミダスのものだったら大発見である。こうしてラミダスの化石も次々と発見されていった。
1992年12月18日撮影
エチオピア人の若手が第3大臼歯を発見した現場、簡易発掘を行った。年代は、上下の火山灰層の測定から、440万年前と、後ほどわかった。
この標本は犬歯を伴った歯列セット、今までの猿人との違いを垣間見ることができた。
1992年のラミダスの調査は、わずか一週間足らずであった。計10標本のラミダス化石を回収した。この年のラミダス調査の最後の日、12月20日、乳歯を伴う顎片が発見された。これはラミダスと類人猿の類似を示す重要なもの、94年のネイチャー論文の表紙を飾った。
1993年の調査、さらに7標本のラミダスが発見された。 犬歯の化石数点から、ラミダスが新しいタイプの原始的な人類祖先であることが揺るぎないものとなった。1993年以後、筆者は当地の現地調査にほとんど参加していないが、その後、同じ440万年前のラミダスの部分骨格標本、570万年前のカダバなど、続々と発見されていった。