第2部 展示解説 動物界

哺乳類の多様性と
標本から読み取ること

 

 

管歯目 :

 現生種はツチブタ Orycteropus afer ( ツチブタ科 , 図 113) のみである。アフリカの固有種で、顔は 円筒状に細長く、鼻先が大きく丸い。体全体に体毛がまばらにしか生えないことがプタを連想させる。前肢 には 4本、後肢には 5本の指がある。門歯も犬歯もなく、臼歯は無根で、エナメル質を欠き、象牙質がセメント質で固まれている。これが管歯目の特徴で、歯髄腔をもつ象牙質は多数の柱状構造がセメント質で束ねられている ( 後藤・大泰司 ,1986) 。おもにシロアリを食べ、長い粘性の舌でなめて食べる。

奇蹄目 :

 蹄の数が奇数である有蹄類を奇蹄目といい、 偶数である偶蹄目と対比される。両者は系統的にはかなり離れている。現生種は 3 科、16種であるが、第三紀初期には有蹄類の中で最も優勢なグループであっ た。ウマの仲間は草原に適応した奇蹄目を代表するグループだが、そのほかにもサイ、パク、カバの仲間がいる。奇蹄目はもっぱら植物を食べるが、反芻せずに 植物を大量に摂取し、盲腸などで発酵させることで栄養摂取の効率を上げる。ウマ Equus caballus は走ることに長けた動物で、そのために四肢が特殊化し、大腿骨から腔骨にかけての構造は非常に頑丈で、それら に大きわめて強力な大腿筋があって強い推進力をもたらす。また進化の過程でその力を分散させないために足先の指が単純化して中指 ( 第 3指 ) だけが発達し、ほかの指は退化した( 図 114) 。一方、細胞壁の発達した消化しにくい葉をもつイネ科植物を利用するためにウ マは強力な咀嚼力をもつが、そのために歯根部の深い歯をもち、歯列も長いため、ウマの特徴である長い顔をもっている ( 図 16 参照 ) 。

 サイ科はアフリカとアジアに分布し、5種がいる。円筒状の太い胴体に短い四肢をもち、鼻の上に大きな角をもつ特異な外観をもつ。シロサイ Ceratotherium simum は体重が 2t を越える最大の種で、アフリカの乾燥地にすむ。角は 2本あるが、ウシやシカの角と違い、骨質ではなく、ケラチン質の繊維の集まりである。頭骨 ( 図 115) は巨大でそれを支えるために肩の部分に強大な 靭帯があって盛り上がっている。植物食で、幅の広い唇を器用に動かして大量の植物をつまんで食べる。アフリカのサイには門歯がないが、アジアのものにはある。アジアにはインドサイ Rhinoceros uninornis、ジャワサイ R. sondaicus 、スマトラサイ Dicerorhinus sumatrensis がいるがいずれも個体数がきわめて少なく絶滅の危険がある。

 パク類は南アメリカと東南アジアに分布するがアフリカ にはいない。大型哺乳類としては原始的な体型を維持 している。全体としてはイノシシに似た体型をしており、鼻と上唇が合着し、ゾウの鼻を短くしたような鼻をもっている。森林に生息し、植物食である。アメリカバク Tapirus terrestris ( 図 116) は南アメリカの山岳地にすむ。 パク科の各種も個体数が減少しており、将来が心配さ れている。

 

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