[ニュースという物語]


梅雨衣酔月情話

『東京絵入新聞』明治二十年(一八八七)七月八日
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
「発端」には「松林伯円演」とあり、新聞種の講談で人気を博した彼の高座を再現するかのような文体で書かれているが、第一回以下は雑報記者が聞き込んだ街談巷説を構成して綴られている。第三十回で中絶したのは、「重罪・軽罪ノ予審ハ、公判ニ付セザル以前ニ之ヲ記載スルコトヲ得ズ」という新聞紙条例第三十三条違反を恐れたためであった。

梅雨衣酔月情話
図282

雑賀園柳香作「走馬燈水月漫画」

『改進新聞』明治二十年(一八八七)七月十七日
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
木下屋東吉すなわち芸者秀吉時代のお梅を主人公にするものの、峯吉にあたる人物も登場しないまま、連載わずか九回目で中絶した。タイトルが示唆するように、当時控訴審判決が出るなどで世間の耳目を集めていた相馬家騒動をないまぜにしており、そのことによる連載中止であったのだろうか。

雑賀園柳香作「走馬燈水月漫画」
図283

花井お梅の公判『東京絵入新聞』

明治二十年(一八八七)十一月十九日
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
『東京絵入新聞』は公判終結の翌日から五日間にわたって連日挿絵入りで、公判の傍聴筆記を掲げた。判決申し渡しの場を描いた挿絵以外は、男装、洋装、あるいは芸者時代のお梅の写真をもとに描いたものと記されており、読者の興味がいかなるところにあったのかをうかがわせる。

花井お梅の公判『東京絵入新聞』
図284


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