[ニュースという物語]


高橋阿伝夜刃譚 仮名垣魯文補綴

明治十八年(一八八五)十一月、錦松堂 
国立国会図書館蔵
明治十二年の金松堂『高橋阿伝夜刃譚』を元版にして活字に組みなおし、翻刻出版されたもの。回数・本文ともに合巻のままで、脱漏部の補填や訂正以外の改変は見られないが、挿絵は望斎秀月によって新たに描かれた。

高橋阿伝夜刃譚 仮名垣魯文補綴
図278

たかはしおでんくどき

明治十三年(一八八〇)五月 吉田小吉
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
近代における事件報道の量的拡大は、口説節やちょぼくれ(浪花節の前身といわれる)、祭文などの大道芸や門付芸に数々の題材を与えた。本来、文字化された報道に先んじるはずのニュース媒体としての「声」が、逆に新聞雑報やつづき物の後追いをしたのである。

たかはしおでんくどき
図279

 

近世人物誌やまと新聞附録 第十一号

明治二十年(一八八七)八月二十日
公判開始以前の新聞附録で、まだ事実関係がはっきりしていないために、事件の原因についても二説の風聞を併記して、「種々入込たる事情もあらんか」と推測するにとどまる。峯吉殺しの現場を再現した絵画には、暗闇に二人の人物を浮びあがらせ、凶器の出刃包丁とともに傘や提灯を配するものが見られる。凶行は梅雨の夜の出来事であった。

近世人物誌やまと新聞附録 第十一号
図280

近世人物誌やまと新聞附録 第十一号

今ハ酔月の女房お梅故は柳橋では小秀/新橋でハ秀吉とて三筋の糸に総を掛/け三弾の何でも宜と気随気まぐれで/鳴らした果五月の闇の暗き夜に以/前ハ内箱今ハ食客の峯吉を殺せし/事ハ普く人の知る所ながら彼を/殺せしといふ原因に二様あり一は/峯吉が平生よりお梅に懸想し言/寄ることも数度なりしが流石に面/恥かかするも気の毒とて風の柳に/受居りしを或る夜兇器をもつて/情欲を遂んと迫りしより止を得/ず之を切害せしといふにあり一ハ世に/も人にも包むべき一大事を峯吉に洩/せしに彼の同意をせざるより事の爰/に及びしともいふ二者何れが是なる/か公判の上ならでハ知るによしなし/唯お梅は是迄も情夫の自己につれ/なかりしを憤り之を害さんと威/したる事二度に及ベりされバ此度/の峯吉殺しも想ふに種々入込たる事情/もあらんか兎にかく凄き婦人なりかし

 

 

 

 

 

大川端箱夫殺花井阿梅の略伝

明治二十一年(一八八八)一月二十日
梅堂国政画、福田熊次郎
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
「東京絵入新聞抜萃」という、活字で組まれた本文は、同紙連載の「梅雨衣酔月情話」や公判傍聴筆記に、裁判をめぐる後日報道など種々の情報をつぎ合わせて再構成したものである。画面中央の「東京重罪裁判所」前の図は、『花井於梅酔月奇聞』所載の挿絵を借りもちいて描かれたものであろう。

大川端箱夫殺花井阿梅の略伝
図281


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