重なりあうまなざし
新聞錦絵が伝えたいくつかのニュースは、素材とした新聞そのものを違えながら、話題内容が重なりあっている。なかには、先行する新聞錦絵を引用したとおぼしき画像の重なりあいもある。これらは関心の偶然の一致という以上に、物語を成立させるリアリティの「型」ともいうべきものを暗示してはいないだろうか。
東京日々新聞 第千十五号
新聞図会 第三十八号東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵京人形とあだ名された美人の女房が、居候と密通した。それを知った薬屋の主人は、巨大な「のし」を作って女房に背負わせ、どこへなりとも持っていけと間男に差し出したという話。「のしをつけてくれてやる」という口言葉が下敷きにある。『新聞図会』が『東京日々新聞』に出た記事をもとにしたことは文中に明らかだが、新聞そのままからというより、新聞錦絵を経由した情報と画面の引用を思わせる。