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[新聞錦絵の情報社会]


郵便報知新聞 第五百五十一号

郵便報知新聞 第五百五十一号

(松本愛が柔術で男をやっつける) 美人で腕っぷしも強い女性の話は新聞錦絵が好んで取り上げた話題の一つである。当時の人気落語家・三遊亭円朝が文の筆者として名を記している。

郵便報知新聞 第五百五十一号

大坂舩越町に骨接を業とする松本/あいと呼ぶ婦人あり年猶二十六才なるが/日頃より柔術にも長たりしが其妍よ/きを以て人其勇を知るものなし近き/頃隣家の娘を連れて長柄川の/堤を過にしに川風寒きかハたれ/時四人の荒男躍り出でおあいと/隣の娘とを両人づつにて取おさへ/強淫なさんと為せしかバ於あいは/大に怒りつつ組付たる一人を水中/投こミ又一人を撞とかし隣の娘を押/臥て上へまたがる一人の領髪とつて/捻倒し拳を堅めて一人の眼の辺を/打けれバ何れも恐れ逃散たり

三遊亭円朝誌

図106

郵便報知新聞 第五百二十五号

(新潟の獄の牢破り)
二人の罪人が組んで牢破りをもくろむが失敗して獄吏に捕らえられた話。風雨を表す斜めに走る線が動きのある画面を強調している。

郵便報知新聞 第五百二十五号

新潟の獄に啓助由蔵と云ふ両個乃悪/漢ありしが共に破牢せんと約束したるうち/由蔵ハ懲役なれバ六十日にて出牢せしが/或夜風雨に乗じ紛れこミ長き棒の/先に鋸と出刃包丁を結付之に便て/塀堀を乗こへ獄に近き格子の内へ件の/品を差入声を潜し我等ハ寺町通真/宗寺の縁の下に忍び居れバ速にいで/来りて尋よと云て去れり然るに此日/啓助か様子怪しと目を付別人を入/替おきたるにぞ早速奸謀発覚て其/夜一個を罪人体ニ仕立彼処に遣し偽て/由蔵を釣立し忽ち縄をうけたりける悪/物巧ミに計ると雖終に獄吏に計られ/たり

松林伯円記

郵便報知新聞 第五百二十五号
図107


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