東京日々新聞 第八百五十六号
a(関取詐欺にかかる)
b(欲深い継母の仕業で養女自殺)
新聞錦絵に掲げられた号数は同じでも、話の内容は全く別な例。この場合は、前者が本紙『東京日日新聞』第八百五十八号の記事から、後者は本紙第八百五十六号の記事に基いている。
東京日々新聞 第八百五十六号(a)
近来詐偽の術巧を極め此謀計に陥る者尠とせず彼有名/の角觝取小柳常吉本年十月下旬越前の国武生に於て/角觝興行為せしに或る夜同国坂井港なる清水磯吉が/手代なりとて小柳が旅宿に来り僕商用にて京阪に至る/べき主命を蒙りしが途中にして小包ミを失ひ路用に事欠き/たり今主家へ立戻らば四五里の費へありて大に商法の機会を/失へり因て関取りの旅宿を驚せしなり願はくバ旅費聊/借用致たしとありけるに清水ハ多分の恩恵を/蒙りし人なれバ/異議にも及ばず金拾五円を貸与へたり手代謝して/退きし後清水角觝場へ来りければ小柳/其事を話しけるに清水驚き予が/手代を京坂に遣し事なし升ハ/全く詐偽に罹りしならんと/小柳も是は四捨八手の/外なりけれバ暗に引/手を以て投けられ/たり |