祭礼番付
祭礼番付は、社寺の祭礼で執り行なわれる祭礼行列巡行や、祭礼の式次第、祭礼に付随する作物などの状況などを、その順番に列記したものであり、多くはその状況を描いた絵を中心とした視覚的な絵番付が多い。これを入手し見ることにより、行列の見物や、祭礼に参加する際に役立てるなどの祭礼の事前及び最中の用途の他、事後の記録としての用途もあった。特にこの祭礼番付で特記しておかなければならないものに、天下祭の祭礼番付がある。
天下祭とは、日枝山王社ならびに神田明神の大祭で、共に江戸幕府が祭礼に関与し、祭礼行列が江戸城内に入ることが許され、それを将軍が上覧することからこの名で呼ばれたものである。両祭とも幕府より祭礼開催に際し、準備金が用意される他、幕閣や御三家、諸大名からの金銭的補助などがなされた。そして、特に祭礼行列の江戸城入城に関しては、事前にその山車の内容、順番、人数が記された番付の提出が義務づけられており、番付と実際が異なる場合、その町の山車及び氏子は江戸城に入ることを禁じられた。幕府も祭礼ごとに奉行を定め、祭礼行列の前後は警護の武士が付き、騎馬武者の先導により、決められた順路で城内をねりまわった。このように、管理された祭礼であり、その管理に番付は欠かせぬものであった。この提出される番付の写しを地本問屋が入手し、各種の形態の番付を出版し販売している。その形態は、祭礼行列の順番が、山車の絵とともに記された一枚摺りの墨摺りのもが一番廉価なもので、これが二〜三枚程度に増え、内容・記述が子細になったもの、おそらく高級品であったと思われる色摺りの表紙で冊子仕立てのものなどがある。江戸をはじめ、国内各所で祭礼番付が制作されているが、その中にあって、山王祭・神田祭のものは、その数の多さや背景的なものも含め特別なものであった。
山王御祭礼番付 文政七年(一八二四)
図68 山王御祭礼番付
御免 ■文政七年申ノ六月十五日
山王御祭礼番附
江戸馬喰町二丁目板元森屋治兵衛
{上段山車}
一番
鶏諌鼓の出し
二番
猿の出し
三番
男猿の出し
三番
馬乗人形出し
三番
日本武尊出し
三番
猿の曲の出し
三番
太鼓打人形
三番
猿田彦三ばん四ばんの間
御雇大神楽
四番
水車
五番
御初穂奉納
六番
松に羽衣
七番
弁天の出し
八番
春日龍神
九番
静の舞
十番
加茂明神
十一番
一来ほうし
十二番
応神天皇 武内宿禰
十二ばん十三ばんの間
本石町四丁分
十軒店附まつり入
十三番
石臺にほたん
十四番
同
十五番同
十六番
月にすすきの出し
十七番
猟舩の出し
十八番
月にすすき
十九番
二十番
二十一番
二十二番同断
二十三番
分銅
二十三ばん
槌の出し
二十四番
神功皇后
二十五番羽衣
二十六番浦島
二十五番
二十六番の間本材木町
一丁目
二丁め
三丁め
四丁め附祭入
二十六番
棟上の出し
二十七番
頼光
同
浦嶋
二十八番
幣に大鋸同
大公望
二十九番
茶釜ちやせんちやしやく
三十番
りやうせん
三十一番
ささ木の四郎
三十二番
神功皇后
三十三番
月にすすき
三十四番
頼朝つるが岡三十五番
ほうらい
三十五番三十六番の間すき
や町
附まつり入
三十六番
斧に鎌
三十七番
頼義
三十八番
宝船
三十九番
ちや臼ひき人形
四十番
やふさめ
四十一番
武内すくね
四十二番
月にすすき
四十三番
幣に弓矢
四十四番
僧正坊牛若
四十五番
猩々
{下段行列図}
○神輿
行列次第
小旗大旗
長柄太鼓持
びんささら
田楽
獅子
社家馬上
御鉾三本
社家
馬上
神馬
御太刀
社家
馬上
神輿
三社
法師武者
十騎
以上山王御祭礼付祭番付 嘉永三年(一八五〇)
図69 山王御祭礼年番順番 文政二年(一八六二)
図70 神田大明神御祭礼付祭番付 嘉永四年(一八五一)
図71 神田大明神御祭礼付祭番付 弘化二年(一八四五)
図72 神田大明神御祭礼付祭番付
{上段山車}
一はん大伝馬丁
鳥太この出し
二はん南伝馬丁
猿の出し
三はん神田はたご丁
翁人形出し
四はん同二丁目
わかめうり出し
五はん神田なへ丁
神くうかうくう
六はん通新石丁
としとく神の出し
七はんすだ丁一丁め
すミよし明神
八はん同二丁
かんうの出し
九はんれんしやく丁
十はん三川丁
うしわか僧正坊
十一はんとしま丁
ほうらいむさしの
むさしの
ゆしまちょう金沢丁
十二ばん
あまの出し
十三ばん橋本丁
十四ばん同二丁目
うらしまの出し
十五ばん
■■■■([虫喰])
十六ばん([虫喰])四丁め
ぼたん
十七ばん九右衛門丁
ぼたん
十八ばん([虫喰])丁一丁メ
十九はん
([虫喰])二丁め
松に将の二十ばん永富丁
龍神
二十一はんたて大工丁
二十二らうそく丁
せき口丁■■
多■■■■
二十三明神西丁
二十四はん■■■■かた丁
千羽つる
二十五はん新石丁
石だいぼたん
二十六はん新かハヤ丁
べん天
二十七はんかぢ丁一二丁め
小かぢ出し
二十八はん
戸かくし岩のり出し
二十九はんよこ大工丁
石たい松竹は出し
三十はんきし丁
きじの出し
三十一はん
たけの内出し
三川丁四
三十二はん御たい所丁
りうじん
三十三はん皆川丁
一丁メ二丁め
松ニ汐くミ桶だし
三十四はん
猩々出し
三十五はん白かへ丁
ゑびすの出し
三十六はん松田丁
よりよし
{行列図}
{奥} 板元
八丁堀水谷丁松坂屋金之助
同丁同茶吉