インフォーメーションテクノロジーが、この5年間の進歩により、ますます身近になったことによって、「仮想」という概念に大きな関心が寄せられるようになった。このテクノロジーは、様々な環境をコンピューター上に創造して、その機能をシミュレーションできるため、これを使えば、私達が慣れ親しんでいる本物の環境に代わって仮想環境が作れるかもしれないという期待が大いに高まった。しかし、この熱狂的な「仮想」という概念のブームが、インフォーメーションテクノロジーの発達に伴う、ごく最近の現象だとしても、この概念そのものは新しいものではない。「仮想(バーチャル)」という言葉は、ラテン語で「潜在的能力」や「力」を表す「ヴィルトゥス」に由来し、それが何らかの効力や機能を発揮したり、知覚できたりした時に現実化するものをいう。ドゥルーズによれば、仮想の現実化は、可能性の実現とは異なるということだ。可能性の実現が、何かを達成するまでのプロセス、すなわち、実存するモデルの再現であるのに対して、仮想の現実化には「終わり」というものがない。仮想が現実化するとどんなものになるかは、数限りなく想定できる。つまり、仮想とは、無限の可能性をはらみ、どこまでも伸びていく直線のようなものである。こう考えると、「仮想」は、従来から言われてきたように現実に代わるものという意味に止まらず、全く新しい概念を表す可能性をはらんだ言葉だということが分かるだろう。この意味で、仮想は現実の代用ではなく、現実と共存し、さらには現実に挑むものでなければならない。仮想とは新しい現実世界を創造する技術なのである。この「仮想」という概念には、形や機能、場所といった従来の意味以上に広い意味がある。このことは、4年前にfoaのプロジェクトを始めた時に、我々の心の中にあった概念と一致している点が多い。我々は、現実という概念が、これまでの伝統的な枠を越えて、思いもよらなかった方向に広がっていく可能性があるということを、実証しようとしていた。当時、我々には無知ゆえの素朴で不器用な考え方、あるいは、無謀な考え方があったからこそ、結果的には、「仮想」とは可能性の実現だとする古い考え方から離れ、新しい考え方に移行できたのかもしれない。そして、それが、現実とは何なのかということを改めて考えるきっかけにもなったのかもしれない。
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YOKOHAMA PROJECT, MODEL VIEW FROM THE TOP OF PIER |
MODEL VIEW FROM THE BOTTOM OF PIER |
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CG IMAGE OF ROOF PLAZA |
APRON PLAN |
TERMINAL PLAN |
CIVIC FACILITIES PLAN |
ROOF PLAZA PLAN |
「消滅の美意識」「幻影の台頭」とは、テクノロジーが著しい進歩を遂げ、今まで不可能だったことが可能になったおかげで、生れた考え方である。テクノロジーの世界では、映像やイメージという仮想世界で、物体と空間が溶け合うことを「仮想」と呼ぶ。しかし、我々は、高度な技術を駆使して現実の代用物を作ろうとしているのではなく、コンピューター上で現実を作り、現実というものを思いもよらない方向に広げていくという全く新しいことに取り組んでいる。
インフォーメーションテクノロジーが、我々の研究の進歩にとっても、また、今まで述べてきたような「仮想世界」の実現にとっても、非常に大切な手段であることは言うまでもない。また、広い意味で捉えれば、インフォーメーションテクノロジーは、現実のシミュレーション手段というよりも、「モデリング」の手段といえる。「モデル」を作るということは、ある物の性質に関して既存のデータがない中で、あるシステムのシミュレーション方法を作るという意味だ。この意味で、インフォーメーションテクノロジーは、現実の焼き直しではない「仮想」を創造する理想的な手段である。コンピューターが可能にしたのは、目の前の現実を模倣することだけではない。今までに見たこともなかったような物の構造やイメージ、あるいは、コンピューターがなければ見られないばかりか、想像すらできなかったような物を生み出すことをも可能にしたのである。「概念」と「イメージ」は、古代ギリシャでは同じ言葉だった。言い換えれば、目に見えるものだけが概念として受け入れうるものだということである。可能性の実現が、何かを自分の感覚で捉え、それが内包する性質や構造を表現し直すことだというなら、「仮想」の現実化はそれとは似ても似つかないものだ。「仮想」には、一度も見たことのないものが見えたり、想像できたり、概念として捉えられたりするような手段が不可欠なのである。
インフォーメーションテクノロジーを通して手に入る、N次元に関する膨大なデータを視覚化し、操作できるようになると、建築の設計図に、時間、光、温度、重さなど、今までは、目で捉えられなかった新たなパラメーターが導入されることになる。また、実際に実験を行わずに、ある条件の下であるシステムがどのように作用するかをテストしたり、我々が都市生活や現在の建築様式の中で培ってきた知識と経験の蓄積をもってしても、考えもつかないような環境を擬似体験することもできる。インフォーメーションテクノロジーには、このような優れた能力、つまり、経験的知識が及ばない領域まで我々の認識を広げ、信じられないほど精密なデータに基づいて新たな環境を創造していく能力があるからこそ、コンピューターは「仮想」を創造する理想的な手段と言えるのである。
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APPROACH |
TRAFFIC PLAZA FOR CRUISE TERMINAL |
ENTRY TO TERMINAL |
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APRON |
BIFURCATION: APRON / DEPARTURE AND ARRIVAL HALL |
DEPATURE AND ARRIVAL HALL |
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BIFURCATION: CRUISE TERMINAL / PLAZA |
PLAZA AND VISITOR'S DECK |
ENTRY TO RESTAURANTS, SHOPPING SPACE |
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BIFURCATION: CRUISE DECK / VISITOR'S DECK |
CRUISE DECK |
SHOPPING SPACE |
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EAST ELEVATION |
LONGITUDINAL SECTION THROUGH CENTER |
LONGITUDINAL SECTION THROUGH WEST SIDE RAMPS |
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SALON OF CIVIC EXCHANGE AND RESTAURANTS SECTION |
TERMINAL SECTION (CENTER) |
SHOPPING SPACE |
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DOMESTIC TERMINAL SECTION |
INTERNATIONAL TERMINAL SECTION |
ELEVATION TOWARD THE CITY |
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ENTRY TO SALON OF CIVIC EXCHA |
PLAZA |
RESTAURANT |
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SALON OF CIVIC EXCHANGE |
EXPLODED SURFACES |
MOCK-UP OF CARDBOARD STRUCTURE |
PUSAN PROJECT
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VIEW OF HIGHRISE BUILDINGS AND ROOF PLAZA |
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VIEW OF ROOF PLAZA |
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VIEW OF CONCOURSE |
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AERIAL VIEW |
VIEW OF PLATFORM |
VIRTUAL HOUSE PROJECT
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AXIAL ELEVATION BASIC UNIT |
TRANSVERSAL SECTION BASIC UNIT (CENTER) |
TRANSVERSAL SECTION BASIC UNIT (SIDE) |
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AXIAL ELEVATION BASIC UNIT |
ELEVATION BASIC UNIT |
MARTHA'S VINEYARD |
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LOWER FLOOR PLAN BASIC UNIT |
UPPER FLOOR PLAN BASIC UNIT |
ROOFTOP PLAN BASIC UNIT |
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ROOFTOP VIEW |
ARIZONA |
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MATTER HORN |
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SCHWARZWALD |
SAHARA |