第3章

エクスペディシオンの展開—現在




東京大学の教官が主宰している海外調査は今や、毎年、百件を優に超えている。

この隆盛は、一九六三年に文部省科学研究費に海外学術調査という種目が設定されたことに負うところ大である。その助成によるものに限ってみても、当初は先述の四件を含めて毎年数件にすぎなかった調査が、一九八〇年には九件、一九九〇年には五十八件、そして一九九六年の調査は百十件にも達している。今や、本学は世界有数の調査輸出機関といってもよい。

テーマも多彩。人文、地史、生物、医学から物理化学の世界まで。地中、海中、果ては宇宙へと。目に見えず、手でふれられない領域の探索まで海外調査が受け持っている。

また、地域もかつての第三世界中心ではなく、欧米や広域を対象とする調査が半数を超す。「エクスペディシオン」の目指す先、探検の先は地球の秘境ではなく、サイエンスの秘境へと変容しているのである。




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