ヒマラヤ植物の研究—その歩みと成果

大場 秀章
東京大学総合研究博物館



 世界一の大山脈、ヒマラヤには実に多様な植物が見られる。そのヒマラヤの植物の魅力を最初に世界に伝えたのは十八世紀のイギリスの著名な植物学者、ジョセフ・ダルトン・フッカー(J. D. Hooker)である。彼は一八五五年にシッキム・ヒマラヤに踏み入り、多数の植物を採集した。研究の成果は多くの著書や論文として発表されたが、それだけでなく、最初のヒマラヤ紀行記でもある『ヒマラヤ紀行』(Himalayan journals)に植物相の多様さとその実体を書き記した。当時インドはイギリスの植民地であったこともあり、ヒマラヤの植物学はイギリス人を中心に展開され、ロンドンの王立キュー植物園やエディンバラの王立植物園に標本が蓄積されていった。こうした伝統は二〇世紀後半にもなお続いている。第二次世界大戦後は大英博物館自然史部門(現・ロンドン自然史博物館)が中心となり、調査隊が何度も派遣され、質の優れた多量の新標本を収集している。ヒマラヤ植物の研究では、このキュー植物園、エディンバラ植物園並びにロンドン自然史博物館が世界的センターの役割を担っている。

 第二次世界大戦後の復興が一段落した一九五〇年代の後半、日本でも海外での学術研究や調査への機運が高まってきた。なかでも、ヒマラヤは、多様な自然が良好な状態で残されているだけでなく、いまだ多くの未踏峰もあり登山の上からも魅力に溢れた地域であった。学術調査と登山を目的にした遠征隊が京都大学を中心に編成され、現地に派遣された。東京大学が、インド植物調査として、ヒマラヤの植物研究を目的とした日本で最初の学術調査を行うのは、京都大学を中心とする一連の登山・学術調査隊の派遣が行われて後のことである。



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東京大学インド植物調査の発足


i その趣旨

 東京大学理学部植物学教室にあった植物分類学研究室は戦後、本田正次教授の後を原寛教授が主宰していた。原(一九一一−一九八六)は東京大学卒業後ハーヴァード大学に留学し、一九四〇年に帰国した。原は日本の植物相とヨーロッパ・北アメリカの温帯植物相との系統関係や種分化などについての解析的な研究を行ったが、一方で日本の植物相と密接な関係のある中国大陸の植物相との比較研究にも強い関心を抱いていた。その研究を深化させるためには中国大陸に実地に植物を探り、比較のための研究を行わねばならないと考えていた。

 しかし、彼が研究室を主宰した当時の日本は、中国との間に国交もなく、同国内の辺境での現地調査や研究は望むべくもない状況であった。このため、原は日本の植物とそれに近縁で共通の祖先から別個に形成されたと考えられていたヒマラヤの植物を比較することで、日本の植物相の起源にかかわる従来の研究をさらに進展させようとしたのである。

 ヒマラヤ、特にその東部の植物相には日本の植物に類似した種が多いことがある程度判っていたので、日本の植物との比較研究に適していた。このように東京大学のインド調査は、インド亜大陸の植物をすべて網羅的に研究することに目的があるのではなく、共通の祖先から分化して形成された姉妹関係にある特定の植物群についての比較研究を行うことにより、日本の植物の起源を探ることが当初の主たる目的であった。その意味でインド植物調査は東京大学の植物学研究において創設期以来脈々と続けられてきた日本植物相の解明にかかわる研究を継承するものであり、いわば内的・必然的な動機によって立案・組織化された学術調査と捉えることができる。

ii インド植物調査隊の発足

 シッキム・ヒマラヤに調査隊を派遣することが決まったのは一九五九年で、時期は翌年の一九六〇年春期とし、インドのラクナウにあるサニー古植物学研究所(Birbal Sahni Institute of Palaeobotany)との共同調査という形で実行することになった。これが第一次東京大学インド植物調査である。

 なお、この調査を共同調査にした理由はインド側植物学者との協力及び調査地域がチベットとの国境に近く、外国人だけの行動がむずかしく、交渉や手続きでの助力が得やすいと考えたためである。調査隊の目標は高等植物を主としてできるだけ多くの標本や生きた植物を集めることであった。因みに高等植物だけでも二万点を越える膨大な量の植物を採集することができた。

 海外での学術研究に対する助成として文部省の補助金(海外学術調査)が交付されるようになったのは、一九六三年からであり、第一回インド植物調査は独自の資金調達によらねばならなかった。原は文部省と折衝し、総経費の半分の寄付金を集めたら、残りの半分を文部省が措置するという内諾を得た。これは文部省が海外での学術調査を正式に助成する糸口のひとつになったものと思われる。事実一九六三年度の調査では、大学当たり一または二チームの割り当てではあったが、文部省の補助金の助成を受けた海外学術調査が行われるようになった。

 経済は復興の兆しにあったとはいえ、一ドルが三六〇円前後の為替レート下での調査総経費の半額を寄付で集めるのは容易ではなかった。当時海外を拠点としたフィールド・サイエンスはその実現までにはいまとは比べものにならぬ困難があった。

iii なぜシッキムが選ばれたか?

 原はネパール、シッキム、ブータンという東ヒマラヤ地域の中でシッキムでの調査を真っ先に行うことにした。それはフッカーの『英領インド植物誌』(Flora of British India)などにより、興味深い植物の多くがシッキムで採集されていたことが大きいと思われる。ネパールでは一九五二、五三年に京都大学隊、ブータンには大阪府立大学の中尾佐助が一九五八年に入国し、それぞれ大きな収穫を得ていたことも原がシッキムを第一に選択した背景としてあったように思われる。

 当時のシッキムは独立国ではあったが、インドは次第にその影響力を及ぼし始めていた。多数のインド人を入植させ、来るべき独立を問う選挙に備えていた。外交官でさえ入国を困難視した国情のシッキムでの学術調査の成功の裏には原の外交力があった。

 この時も、荷物の発送が済んだ出発直前になって、至急電報でインド政府からシッキム入国の許可を取り消すという連絡があった。しかし、原は強引に出発し、シッキムの入り口であるダージリン地域でインド側と長距離電話で交渉を再開した。交渉は難航し、原は他の隊員を国境に向け出発させ、許可証を入手次第追いかけることにした。このときのことを、原は、「ぎりぎりに許可証が届き、私はジープをやとって山稜をとばした。五月九日の夕方、シンガリラ山脈の海抜三六〇〇メートルの峰の上から登ってくる隊員に『おーい、許可証がとれたぞ』と手を振りながら叫んだ時の感激は、今も忘れない」と回想している。

iv 第二次・第三次インド植物調査

 一九六三年には第二回インド調査隊を派遣する。この調査では多くの植物の果実期に当たる秋期を選び、またインド平原に続くネパール東部の熱帯にまで踏み入ったこともあり、未知の植物や不完全にしか知られていなかった植物について新しい資料を数多く手に入れることができた。現地調査に入るまでの交渉も前回の経験通りにはいかないこともあったが、初回に比べれば問題は少なかった。

 一九六七年にはブータンでの調査を実施した。この調査でも許可を得るため原は持ち前の交渉力を駆使した。原の交渉力なくしてはこの調査は実現できなかったと思われる。原は書く。

 「ニューデリーに飛んだ。日本大使館をたずねると、自分の方としてはこれ以上交渉はできないし、とても無理と思うがご希望なら直接あたってごらんなさいと、そっけない返事である。……インド外務省を訪れ、外務次官と会い、われわれの目的や研究成果、ブータンに行くことの緊急性を詳しく説明し、特例として許可してくれるように懇請した。次官は私の説明にうなずき、打ち解けた態度を見せながらこういった。『実はブータンに入ってしまえば問題はないのですが、インドとの国境付近に、軍事的に見られたくないことがあるので、許可できないのです』と。彼はこれで話を終わるつもりだったかも知れないが、私は内心しめたと思い、すぐにこういった。

『われわれの見たいのはブータン内の植物です。軍事的なことには全く関心がありませんから、おっしゃる通りなら、私どもを目かくしした車で、ブータンへ送り込んで下さい。そうすれば双方のいうことが両立するでしょう』。確かに手ごたえがあって、彼は少しして、『あなたのいわれることはよく分かりました。考慮してみますから、改めてお会いしましょう』といった。次の会見の時、次官はにっこりしながら、『あなたのご希望通り取り計らうことにします』……彼は堅く握手してから、わざわざ階下まで私を見送ってくれた」。

 原の助手としてこの学術調査の実務を一手に引き受けてきた金井弘夫は、一九六八年にコロンボ・プランの専門家としてネパールに派遣されることになった。また、これまでシッキム、ブータン、ネパール、インドでの現地調査をすべて経験してきたこともあり、一九六九年のシッキムとネパールでの現地調査は計画通り順調に進んだ。そしてネパールでは金井がこの調査に合流した。金井に代わって大橋広好が実務面で原をサポートした。

 なお、この調査がシッキムでの最後の現地調査となった。インドはシッキムの領有を画策し、政情が不安定となったために外国人の入国は禁止され、やがてシッキムはインドに併合され、伝統あるシッキム王国は消滅した。


第三次調査隊メンバー(一九六七年)。後列左からカルマ・ポール(サーダー)、大橋隊員、山崎副隊長、田中隊員、原隊長、金井隊員、一人おいて村田隊員、前列はシェルパの人たち、右端はレプチャ人のコック。

v 第五次インド植物調査

 一九七二年に原は東京大学を退官した。一九七〇年にネパールから帰国した金井弘夫は総合研究資料館(現・総合研究博物館)の最初の助教授となり、インド植物調査を引き継ぐことになった。一九七二年に第五次インド植物調査を組織した。この調査隊は当初、ブータンを対象国としていたが、国王が急死したことなどの事情があって入国できず、第二の候補地としたネパール東部とインド・ベンガル州のダージリンで現地調査を実施した。

 ところでインド植物調査は東京大学と銘打っているが、当初から京都大学(村田源)、お茶の水女子大学(津山尚)、武田薬品(冨樫誠)などの研究者を迎えており、この方式はその後も継承されていく。この調査では隠花植物相の解析も重要な研究テーマとして取り上げられ、コケ植物の専門家として岩月善之助(服部植物研究所)、シダ植物の岩槻邦男(京都大学)をメンバーに迎えた。実務面は当時東北大学助手であった筆者が分担した。

 この調査は東京大学としては初めてネパール東部のジャルジャル・ヒマールとルンバ・スンバ・ヒマールを踏査した。ジャルジャル・ヒマールは一九七七年と九一年にも調査を行ったが、モンスーンの影響を直接受ける山塊で降雨量も多く、とりわけ多様な植物相が発達している。しかもネパールではその植物相がもっとも良好な状態で保たれている地域であり、高山帯を中心とした第二期のヒマラヤ植物調査では重要な拠点に選ばれた。

 この一九七二年の調査では、分布が限られ、しかも、それまでヒマラヤからは未発見であったナンジャモンジャゴケが発見された。このコケは藻類に類似した特異な形態をもち当時は原始的なコケ植物と考えられていた。しかも、この調査では同属の別の種も同時に発見され、世界でヒマラヤにのみナンジャモンジャゴケ属の二種が同所的に分布することも明らかにされた。

 この調査によって、はじめて東部ヒマラヤのコケ植物相、シダ植物相の概要を掌握することができた。顕花植物についても、当初の、日本植物との関連植物についての比較研究から、次第にヒマラヤ地域の植物相全体を掌握し、解析する方向へと研究は広がっていた。その背景として、ロンドン自然史博物館と東京大学で、ネパール産顕花植物相構成種を網羅した、集覧を纏めるという共同研究が行われることになったことがある。その結果、特定の植物を探るだけではなく、植物相構成種全体がその研究対象となったのである。

 東京大学を退官した原も途中から現地調査に参加して、ダージリン地域とネパール中部のゴサインクンドを踏査した。一八七五年に発見されて以降、誰も見いだせなかったリンドウ科の腐生植物コティランテラ属泫Cotylanthera泠のヒマラヤ産種を再発見した。これがきっかけとなって原はこの属についての世界初の分類誌(モノグラフ)を発表した。

 金井はこの調査に先立って東京大学から国立科学博物館に移った。そのため、大橋広好が研究代表者となりこの調査を引き継ぐことになった。また、一九七七年には、第六次インド植物調査をネパール東部のアルン川地域とジャルジャル・ヒマールなどで現地調査を実施した。

vi インド植物調査の成果—第一期調査を終える

 一九六〇年の第一次調査からこの調査までシッキムを中心にブータン東部及びネパール東部・中部での現地調査を実施した[挿図1-3]。この現地調査により得られた資料・標本による研究成果は、植物研究雑誌をはじめとする国内外の学術専門誌に論文として発表された。また、採集した植物の分類学的研究を中心に集大成されたFlora of Eastern Himalayaが原の編纂で一九六六年に刊行され、七一年にはその第二報告、七五年には第三報告が出版された(後者は大橋広好が編纂)。第一報告は七四〇頁を超え植物学の類書の中では大部であり、しかも良質なカラー写真を多数挿入したこともあって注目された。が、何よりも先進国の植物学者を驚嘆させたことは、それまでヒマラヤ植物についてほとんど研究歴をもたない日本の植物学者が、現地調査からたった六年にして採集したすべての植物を同定し終えたことであっただろう。このことは原を中心に学術上の準備も着々と進められていたことを物語っている。


[挿図1]


[挿図2]一九七二年−タムール川−メワコーラ(ネパール東部)、ダージリン及びシンガリラ(インド北東部・ネパール東部)


[挿図3A]一九六九−七〇年-ネパ−ル中北部及び中南部(ネパール中部)


[挿図3B]一九七二年-ゴサインクンド(ネパール中部)

ヒマラヤ植物調査団概要
メンバー(所属、肩書は当時のまま)
 
1960年4-6月
調査国シッキム・インド
調査地域シッキム南部及びダージリン(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
金井弘夫東京大学理学部助手
村田 源京都大学理学部講師
津山 尚お茶の水大学理学部教授
冨樫 誠武田薬品工業会社研究所研究員
 
1963年3-4月
調査国シッキム
調査地域南部(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
 
1963年9-12月
調査国ネパール
調査地域タムール川地域-シンガリラ(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
金井弘夫東京大学理学部助手
黒澤幸子東京大学理学部教務職員
村田 源京都大学理学部講師
津山 尚お茶の水大学理学部教授
冨樫 誠武田薬品工業会社研究所研究員
 
1964年9月
調査国インド・シッキム
調査地域ダージリン及びシッキム南部(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
 
1967年3-6月
調査国ブータン
調査地域ブータン西部(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
山崎 敬東京大学理学部助教授
金井弘夫東京大学理学部講師
大橋広好東京大学理学部助手
田中 治東京大学薬学部教授
村田 源京都大学理学部講師
 
1969年2月-1970年11月
調査国ネパール
調査地域ネパール中北部及び中南部(挿図3A)
メンバー金井弘夫東京大学理学部講師
 
1969年5-7月
調査国ネパール・インド
調査地域1)トリスリ川-ゴサインクンド、2)ダージリン(挿図1)
メンバー原  寛東京大学理学部教授
金井弘夫東京大学理学部講師
大橋広好東京大学理学部助手
黒澤幸子東京大学理学部教務職員
 
1972年5-9月
調査国ネパール・インド
調査地域1)タムール川-メワコーラ(挿図2)、2)ダージリン及びシンガリラ(挿図2)、39ゴサインクンド(挿図3B)
メンバー金井弘夫東京大学総合研究資料館助教授
原  寛東京大学総合研究資料館(名誉教授)
大橋広好東京大学理学部講師
岩槻邦男京都大学理学部教授
大場秀章東北大学理学部助手
岩月善之助服部研究所研究員
P. R. Shakyaネパール王立薬用植物研究所研究官
 
1977年7-9月
調査国ネパール・インド
調査地域1)タムール川−メワコラ(挿図2)、2)ダージリン(挿図2)
メンバー大橋広好東京大学理学部助教授
大場秀章東京大学総合研究資料館助手
立石庸一東京大学総合研究資料館

 その原はヒマラヤと日本に産する類似の植物を分類学的に比較した論文をまとめ、ヒマラヤに日本産のものに類似する多数の植物が存在することと、その実体についてはじめて具体的な言及を行った。こうして、日本からヒマラヤに至る地域にのみ分布する日本・ヒマラヤ要素に当たる植物が多数摘出されたのである。この原の論文こそは東京大学インド植物調査の当初の目的に応える研究成果であった。また、日本・ヒマラヤ要素といえるアオキ属とハナイカダ属をはじめ、テンナンショウ属、ツクバネソウ属、ナルコユリ属、ユキザサ属、チクセツニンジン属などの分類誌を纏めた。さらに、原は黒沢幸子と共同して当時温帯地域の植物について解析が進められていた細胞遺伝学的な研究をヒマラヤの植物について行い、日本の植物と関連のある植物についてその染色体数を明らかにした。

 インド植物調査に参加した多くの植物学者もそれぞれの専門領域で多くの成果を収めた。金井弘夫は日本・ヒマラヤ要素植物の地理的分布や、植生帯の垂直分布についての解析を行った。大橋広好はヒマラヤを含むアジア産のマメ科ヌスビトハギ属の分類誌を発表した。先に述べた原や大橋らによるモノグラフはヒマラヤ地域の植物相の解明に向けた研究であることは明らかである。


キャンプ地における押し葉標本の作成(一九六七年)。採集した植物を新聞紙にはさんでいる(中央左)、右は荷物整理を行っているシェルパたち。


キャンプ地における標本乾燥(一九六七年)。新聞紙をはさんだ植物は、左右より圧力をかけて、熱により乾燥させる。当時は熱源として、薪を利用した。


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ヒマラヤ高山帯植物相の研究—第二期調査の開始


i その発端

 一九七二年のインド植物調査に参加して初めてヒマラヤを訪れた筆者は、続いて一九七七年にも東ネパールでの植物調査(第六次調査)に参加し、ジャルジャル・ヒマールやインドのダージリン地方を調査した。これらの調査を通じて、標高四〇〇〇メートルを超える高山帯の植物相は、高山帯よりも下部の植生帯の植物相とは異質であり、両者の間は不連続ではないかという考えを抱いた。また、その植物相は日本の温帯や亜寒帯に類似する種が多く見いだされるだけでなく、その中には特異な形態をもち巨大化した植物や極端に矮小化した植物が数多く含まれるなど、他の地域やヒマラヤの下部植生帯には見られない独自性の高いものであることにも注目した。

 高山は植物にとって一種の極限環境にある。夏は短く、植物はその限られた期間内で種子の発芽から次世代の種子生産までの諸過程を終えねばならない。強い紫外線、低圧からくる恒常的な乾燥状態、大きな蒸発散量など、植物の生育に好ましい条件は見いだせない。しかし、こうした極限の環境下で植物は本性を呈する可能性が高い。また、特異な形態をした植物について、その形態の由来やその適応的な意義を、好環境下に生きる植物よりも少ない要因を考慮に入れるだけで解析できる、という利点もある。さらに幸いなことに、計測機器の多くが軽量化し、野外への持ち運びも可能となった。発電機の性能も格段によくなっていた。筆者はこのような背景を考慮し高山帯植物の解析を第二期のインド植物調査の新たな中心課題とし、この調査を実施していくことにした。

 第一期の調査が当初日本の植物相の起源を探るための研究を中心としていたため、野外調査は日本との関連植物が多い森林地帯に中心をおいてきた。これに対して世界最大の山脈であるヒマラヤ自体での植物の進化や多様性の形成過程を探ることを目的とした第二期の現地調査は高山帯を中心に行い現在に至っている。

ii 一九八三年現地調査

 当時ネパールでの唯一の植物学関連の研究機関であった、王立薬用植物研究所(Department of Medicinal Plants)は一九七七年に会ったマラ博士(S. B. Malla)が所長の職にあったので、手紙を送り共同研究を提案した。マラ博士からはすぐに快諾の返事をいただき、調査計画は順調に準備が進んだ。

 この一九八三年の調査は当時入国が禁止されていた、ネパールのムスタン地方で行うことを予定した。ムスタンは乾燥した特異な環境下にあるが、その植物相の調査は十分ではなかった。しかし、ムスタン入国は許可が下りず、調査地にはアンナプルナ・ヒマール及びロルワリン・ヒマールを選んだ[挿図4-5参照]。


[挿図4]一九八三年−アンナプルナ・ヒマール(カリガンダキ及びマルシャンディー川地域)(中部ネパール)


[挿図5]一九八三年−ロルワリン及びカーレコラ地域(中部ネパール)

1983年7-10月
調査国ネパール
調査地域1)アンナプルナ・ヒマール(カリガンダキ及びマルシャンディー川地域)(挿図4)、2)ロルワリン及びカーレコラ地域(挿図5)
メンバー大場秀章東京大学総合研究資料館助教授
金井弘夫国立科学博物館植物研究部室長
若林三千男東京都立大学理学部牧野標本館助教授
鈴木三男金沢大学教養部助教授
秋山 忍東京大学総合研究資料館(理学系研究科博士課程)
K. R. Rajbhandariネパール王立薬用植物研究所次席研究官

 現地調査ではヒマラヤ地域植物相についての解析を継続することとし、植物標本の収集に努めた。これは現在にも引き継がれており、本博物館が収蔵するヒマラヤ地域植物の標本数も三十万点を超え、先のイギリスの三研究機関に次ぐ世界のヒマラヤ植物の研究センターとなっている。

iii 新しい研究展開

 この調査から新たに細胞遺伝学並びに木材解剖学の解析を加えることになった。

 それまで細胞遺伝学の研究は皆無ではなかったが、従来の方法は種子や生きた植物を採取して持ち帰り研究を行うものであった。そのため観察できる植物や集団の数に制約があった。若林三千男(東京都立大学)を中心に、後に若林法と呼ばれるサンプリング法を開発した。それは観察に必要な根端細胞を現場で処理・固定を行う一方で、冷却剤や保冷剤を使って低温を維持し、日本に持ち帰るものであった。この方法で一度の調査で二百以上の集団からの根端採取ができ、数多くの種について一個体のみの観察から集団レベルで染色体数を観察するなど、研究の精度を大幅に高めることができた。

 木材解剖学もヒマラヤ植物を対象としてはほとんど行われていなかった。しかし、材の構造は木本植物の特徴を明らかにするうえで欠かせない基本的な属性である。また、高山帯の下限は森林や高木の生育限界線でもある、森林限界や樹木限界にあり、高山帯の特徴を明らかにするためには、樹木の解剖学的な特性を掌握する必要があった。しかも、ヒマラヤは森林限界や樹木限界から高山帯にかけてツツジ属の多様な高木種や低木種が分布しているので、こうした問題のための研究の場としても優れていた。

 鈴木三男(金沢大学)が中心となり、調査方針や材料の採取方法が検討された。その結果、木を切り倒し材料を採取していた従来の方法に代わり、鋸や鑿を用いて樹皮下からおよそ二³三センチ角のブロックを取り出し、固定するサンプリング法を開発することで、サンプリングを容易にし、かつ樹木への損傷を最小限にとどめることに成功した。

 引き続いて実施された一九八五年の現地調査では、菊池多賀夫(東北大学)により地形単位ごとの植生の調査、気象観測などが行われた。

 一九九一年の現地調査は、一九七二、七七年に続きジャルジャル・ヒマールを調査対象地域としたが、調査では巨大化する温室植物であるセイタカダイオウRheum nobile(タデ科)についての解析を中心に据えた。寺島一郎(東京大学)は光合成、増沢武弘(静岡大学)は生長解析、菊池多賀夫は植生、若林三千男は細胞遺伝学、大森雄治(横須賀市博物館)は花粉などの形態、秋山忍(東京大学)、能城修一(森林総合研究所)、池田博(東京大学)と筆者は地域植物相を解析した。

 この調査はいろいろな意味で従来にない画期的なものであった。なかでも特筆されるのは、大型の実験機器を使用する観察と測定を行ったことであろう。標高五〇〇〇メートル近くでは低圧のため普通の実験機器やパソコンがうまく作動しないことも判ったが、実験や計測は順調に進んだ。また心配していた低圧下での発電用ガソリンの気化による引火事故もなかった。調査結果は逐次論文として専門学術誌などに発表されつつあり、従来のヒマラヤ研究にはない新しい側面を開くものであった。その意味でこの調査はヒマラヤの植物研究に新時代の到来を告げるものであったということができる。



3


まとめ

 ヒマラヤの植物についての従来の分類法は高山帯で多様性の高い分類群ほど問題点が多く、不完全であった。その植物相の解析研究として、イワベンケイ属(大場秀章)、イチゴツナギ属(ラジバンダリ K. R. Rajbhandari、東京大学にて学位取得)、ヒゲハリスゲ属(ラジバンダリ・大場秀章)などの分類群の分類学的研究も進められた。研究の進展とともにヒマラヤで特に多様化した分類群での系統進化のあり方やその過程などへの関心が深まっていった。また、これまで標本により個体レベルで進められていた種の認識も集団を単位としての解析が行われるようになった。ツリフネソウ属(秋山忍)、キジムシロ属(池田博)、ユキノシタ属(若林三千男)、イグサ属(宮本太、東京農業大学)などでは集団解析による成果の一部が公表されている。さらに、トウヒレン属をはじめとしたキク科に対象を広げていきつつある(なお、これまでの研究成果は表1、2を参照していただきたい)。


[表1] 東京大学ヒマラヤ植物調査隊による主な出版物

1 研究報告
Hara, H. Compil., 1966. The Flora of Eastern Himalaya. Tokyo: University of Tokyo Press.
Hara, H. Compil., 1971. The Flora of Eastern Himalaya. Second Report. Tokyo: University of Tokyo Press. (The University Museum, The University of Tokyo, Bulletin No. 2.)
Ohashi, H. Compil., 1975. The Flora of Eastern Himalaya. Third Report. Tokyo: University of Tokyo Press. (The University Museum, The University of Tokyo, Bulletin No. 8.)
Ohba, H. and S.B. Malla Eds., 1988. The Himalayan Plants, Volume 1. Tokyo: University of Tokyo Press. (The University Museum, The University of Tokyo, Bulletin No. 31.)
Ohba, H. and S.B. Malla Eds., 1991. The Himalayan Plants, Volume 2. Tokyo: University of Tokyo Press. (The University Museum, The University of Tokyo, Bulletin No. 34.)
Ohba, H. and S. Akiyama, 1992. The Alpine Flora of the Jaljale Himal, East Nepal. The University Museum, The University of Tokyo, Nature and Culture No. 4.

2 写真集
東京大学インド植物調査隊編、1963、『シッキム/ヒマラヤの植物』、保育社。
東京大学インド植物調査隊編、1968、『東部ヒマラヤの植物写真集』、井上書店。

3 学術論文
Hara, H., 1961. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (1). Journal of Japanese Botany 36(3): 75-80.
Hara, H., 1961. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (2). Journal of Japanese Botany 36(4): 97-100.
Yamazaki, T., 1962. Notes on Scrophulariaceae of Asia. Journal of Japanese Botany 37(7): 263-273.
Mizushima, M., 1963. Notes on some Caryophyllaceous plants from Sikkim Himalaya. Journal of Japanese Botany 38(5): 149-154.
Hara, H. and H. Kanai, 1964. The discovery of Tetracentron in East Nepal. Journal of Japanese Botany 39(7): 193-195.
Tuyama, T., 1964. Notes on Himalayan orchids (1). Journal of Japanese Botany 39(5): 129-132.
Tuyama, T. and H. Hara, 1964. Podostemaceae found in Eastern Himalaya. Journal of Japanese Botany 39(6): 185-188.
Hara, H., 1965. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (3). Journal of Japanese Botany 40(1): 19-22.
Hara, H., 1965. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (4). Journal of Japanese Botany 40(4): 97-103.
Hara, H., 1965. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (5). Journal of Japanese Botany 40(11): 327-328.
Hara, H., 1966. Taxonomic comparison between corresponding taxa of spermatophyta in Eastern Himalaya and Japan. In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya, pp. 627-657. Tokyo: University of Tokyo Press.
Kanai, H., 1966. Phytogeography of Eastern Himalaya, with special reference to the relationship between Himalaya and Japan. In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya, pp. 13-38. Tokyo: University of Tokyo Press.
Kurosawa, S., 1966. Cytological studies on some Eastern Himalayan plants. In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya, pp. 658-670. Tokyo: University of Tokyo Press.
Mizushima, M., 1966. Novelties in the Himalayan Cucurbitaceae and Caryophyllaceae. Journal of Japanese Botany 41(9): 259-260.
Hara, H., 1968. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (6). Journal of Japanese Botany 43(2): 44-48.
Hara, H., 1969. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (7). Journal of Japanese Botany 44(12): 373-378.
Hara, H., 1969. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (8). Journal of Japanese Botany 45(3): 91-95.
Hara, H., 1970. On the Asiatic species of the genus Panax. Journal of Japanese Botany 45(7): 197-212.
Hara, H., 1971. A revision of the Eastern Himalayan species of the genus Arisaema (Araceae). In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya. Second Report, pp. 321-354. Tokyo: University of Tokyo Press.
Kurosawa, S., 1971. Cytological studies on some Eastern Himalayan plants and their related species. In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya. Second Report, pp. 355-364. Tokyo: University of Tokyo Press.
Ohashi, H., 1971. A monograph of the subgenus Dollinera of the genus Desmodium (Leguminosae). In: H. Hara Compil. The Flora of Eastern Himalaya. Second Report, pp. 259-320. Tokyo: University of Tokyo Press.
Hara, H., 1972. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (9). Journal of Japanese Botany 47(4): 107-115.
Hara, H., 1972. New or noteworthy flowering plants from Eastern Himalaya (10). Journal of Japanese Botany 47(5): 137-143.
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4 その他
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Koba, H., Akiyama, S., Endo, Y., and H. Ohba, 1994. Name List of the Flowering Plants and Gymnosperms of Nepal. The University Museum, The University of Tokyo Material Report No. 32.
大場秀章、一九八六、「ヒマラヤ高山帯の植物」、『科学』五六巻三号 一四六−一五二頁。
大場秀章監修、一九九二、「特集・ヒマラヤの高山植物—その適応と生態」、『遺伝』四六巻九号八−五〇頁。


[表2] 東京大学ヒマラヤ植物調査隊によって見いだされた新分類群


Spermatophyta(種子植物)
■Angiospermae(被子植物)
Acriopsis harae Tuyama(ラン科)
Anemone fuscopurpurea H. Hara(キンポウゲ科)
Arisaema biflagellatum H. Hara(サトイモ科)
Arisaema exappendiculatum H. Hara(サトイモ科)
Arisaema ostiolatum H. Hara(サトイモ科)
Arisaema vexillatum H. Hara & Ohashi(サトイモ科)
Baliospermum nepalense Hurusawa & Ya. Tanaka(トウダイグサ科)
Begonia flagellaris H. Hara(シュウカイドウ科)
Begonia flaviflora H. Hara(シュウカイドウ科)
Begonia leptoptera H. Hara(シュウカイドウ科)
Bistorta amplexicaulis (D. Don) Greene var. pendula H. Hara(タデ科)
Bistorta diopetes H.Ohba & S. Akiyama(タデ科)
Bistorta jaljalensis H.Ohba & S. Akiyama(タデ科)
Bistorta milletioides H.Ohba & S. Akiyama(タデ科)
Bistorta sherei H.Ohba & S. Akiyama(タデ科)
Bulbophyllum otoglossum Tuyama(ラン科)
Cardamine nepalensis Kurosaki & H. Ohba(アブラナ科)
Cardamine sikimensis H. Hara(アブラナ科)
Cayratia japonica (Thunb.) Gagnep. var. mollis (Wall. ex Laws.) Momiyama f. glabra Momiyama(ブドウ科)
Ceropegia bhutanica H. Hara(ガガイモ科)
Chesneya polystichoides (Hand. -Mazz.) Ali subsp. bhutanica Ohashi(マメ科)
Chrysosplenium singalilense H. Hara(ユキノシタ科)
Desmodium nepalensis Ohashi(マメ科)
Disporum leucanthum H. Hara(ユリ科)
Elaeagnus caudata Schlecht. ex Jackson var. aliena Momiyama(グミ科)
Elaeagnus infundibularis Momiyama(グミ科)
Elaeagnus kanaii Momiyama(グミ科)
Eriocaulon exsertum Satake(ホシクサ科)
Eriocaulon kathmanduense Satake(ホシクサ科)
Eriocaulon obclavatum Satake(ホシクサ科)
Eriocaulon trisectoides Satake(ホシクサ科)
Galium pusillosetosum H. Hara(アカネ科)
Glochidion assamicum (Mull. Arg.) Hook.f. var. brevipedicellatum Hurusawa & Ya. Tanaka(トウダイグサ科)
Glochidion metanubigenum Hurusawa & Ya. Tanaka(トウダイグサ科)
Gongronema ventricosum Hook.f. var. bhutanicum H. Hara(ガガイモ科)
Impatiens bicornuta Wall. var. micrantha H. Hara(ツリフネソウ科)
Impatiens griersonii S. Akiyama, H. Ohba & M. Suzuki(ツリフネソウ科)
Impatiens harae H. Ohba & S. Akiyama(ツリフネソウ科)
Impatiens kharensis S. Akiyama, H. Ohba & Wakabayashi(ツリフネソウ科)
Impatiens mallae S. Akiyama, H. Ohba & M. Suzuki(ツリフネソウ科)
Impatiens pradhani H. Hara(ツリフネソウ科)
Impatiens sunkoshiensis S. Akiyama, H. Ohba & Wakabayashi(ツリフネソウ科)
Isodon dhankutanus Murata(シソ科)
Juncus albescens Satake(イグサ科)
Juncus bhutanensis Satake(イグサ科)
Juncus ganeshii Miyamoto & H. Ohba(イグサ科)
Juncus harae Miyamoto & H. Ohba(イグサ科)
Juncus nepalicus Miyamoto & H. Ohba(イグサ科)
Juncus tratangensis Satake(イグサ科)
Kobresia esbirajbhandarii Rajbhandari & H. Ohba(カヤツリグサ科)
Kobresia harae Rajbhandari & H. Ohba(カヤツリグサ科)
Kobresia kanaii Rajbhandari & H. Ohba(カヤツリグサ科)
Kobresia mallae Rajbhandari & H. Ohba(カヤツリグサ科)
Liparis togashii Tuyama(ラン科)
Lloydia flavonutans H. Hara(ユリ科)
Lysionotus atropurpureus H. Hara(イワタバコ科)
Maddenia himalaica Hook.f. & Thomson var. glabrifolia H. Hara(バラ科)
Malaxis tamurensis Tuyama(ラン科)
Mikania cordata (Burm.f.) R.L.Robinson var. indica Kitamura(キク科)
Mitrephora harae Ohashi(ヤマモガシ科)
Norysca urala (Hamilt.) K. Koch var. angustifolia Y. Kimura(オトギリソウ科)
Panax pseudo-ginseng Wall. subsp. himalaicus H. Hara(ウコギ科)
Paris polyphylla Sm. var appendiculata H. Hara(ユリ科)
Paris polyphylla Sm. var wallichii H. Hara(ユリ科)
Pedicularis terrenoflora Yamazaki(ゴマノハグサ科)
Pedicularis yalungensis Yamazaki(ゴマノハグサ科)
Pegaeophyton bhutanicum H. Hara(アブラナ科)
Pegaeophyton minutum H. Hara(アブラナ科)
Pilea kanaii H. Hara(イラクサ科)
Poa harae Rajbh.(イネ科)
Poa kanaii Rajbh.(イネ科)
Poa mustangensis Rajbh.(イネ科)
Polygonatum singalilense H. Hara(ユリ科)
Potentilla x microcontigua H.Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Potentilla x polyjosephiana H.Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Potentilla peduncularis D.Don var. ganeshii H.Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Potentilla polyphylla Wall. ex Lehm. var. himalaica H.Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Potentilla tristis Sojak f. ciliata H.Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Primula megalocarpa H. Hara(サクラソウ科)
Prunus carmesina H. Hara(バラ科)
Prunus cornuta (Wall. ex Royle) Steudel var. villosa H. Hara(バラ科)
Rabdosia phulchokiensis Murata(シソ科)
Ranunculus himalaica Kadota(キンポウゲ科)
Ranunculus makaluensis Kadota(キンポウゲ科)
Ranunculus pegaeus Hand. -Mazz. var. curvistylis Kadota(キンポウゲ科)
Rhamnus flavidus Momiyama(クロウメモドキ科)
Rubus acaenocalyx H. Hara(バラ科)
Rubus x semi-nepalensis Naruhashi(バラ科)
Rubus senchalensis H. Hara(バラ科)
Salix anticecrenata Kimura(ヤナギ科)
Salix anticecrenata Kimura mstr. monadelpha Kimura(ヤナギ科)
Salix lindleyana Kimura f. hebecarpa Kimura(ヤナギ科)
Salix plectilis Kimura(ヤナギ科)
Salix pseudocalyculata Kimura(ヤナギ科)
Satyrium nepalense D.Don f. albiflorum Tuyama(ラン科)
Saussurea lamninamaensis Kitamura(キク科)
Saussurea topkegolensis H. Ohba & S. Akiyama(キク科)
Saxifraga amabilis H. Ohba & Wakabayashi(ユキノシタ科)
Saxifraga harae H. Ohba & Wakabayashi(ユキノシタ科)
Saxifraga jaljalensis H. Ohba & S. Akiyama(ユキノシタ科)
Saxifraga lamninamensis H. Ohba(ユキノシタ科)
Saxifraga mallae H. Ohba & Wakabayashi(ユキノシタ科)
Saxifraga rolwalingensis H. Ohba(ユキノシタ科)
Scrophularia sikkimensis Yamazaki(ゴマノハグサ科)
Sedum amabile H. Ohba(ベンケイソウ科)
Sedum pseudosubtile H. Hara(ベンケイソウ科)
Senecio topkegolensis Kitamura(キク科)
Sibbaldia emodi H. Ikeda & H. Ohba(バラ科)
Smilacina fusca Wall. f. papillosa H. Hara(ユリ科)
Smilacina fusca Wall. var. pilosa H. Hara(ユリ科)
Sophora bhutanica Ohashi(マメ科)
Stellaria neotomentosa Mizushima ex H. Ohba(ナデシコ科)
Streptopus parasimplex H. Hara & Ohashi(ユリ科)
Tetracentron sinense Oliv. var. himalense H. Hara & Kanai(スイセイジュ科)
Thalictrum alpinum L. var. minutissimum H. Hara(キンポウゲ科)
Thunbergia clarkei Yamazaki(キツネノマゴ科)
Tithymalus pseudosikkimensis Hurusawa & Ya. Tanaka(トウダイグサ科)
Trillium tschonoskii Maxim. var. himalaicum H. Hara(ユリ科)
Tripterospermum nigrobaccatum H. Hara(スイカズラ科)
Viola betonicifolia J.E.Sm. f. pubescens H. Hara(スミレ科)
Viola bhutanica H. Hara(スミレ科)
Viola paravaginata H. Hara(スミレ科)
Wulfenia nepalensis Yamazaki(ゴマノハグサ科)

■Gymnospermae(裸子植物)
Pinus wallichiana A.B.Jackson var. manangensis H. Ohba & M. Suzuki(マツ科)

■Pteridophta(シダ植物)
Dryopteris harae H. Ito(オシダ科)
Lepisorus nepalensis K.Iwatsuki(ウラボシ科)
Pteris nepalensis H. Ito(イノモトソウ科)

■Bryophyta(コケ植物)
Barbella turgida Noguchi(ハイヒモゴケ科)
Cephalozia terminalis Hattori(ヤバネゴケ科)
Cephaloziella rubella (Nees) Warnst. var. latiloba N. Kitagawa(コヤバネゴケ科)
Delavayella serrata Steph. f. stolonifera Hattori(Delavayellaceae)
Diplocolea sikkimensis Amakawa(ツボミゴケ科)
Entodon nepalensis Mizushima(ツヤゴケ科)
Frullania bhutanensis Hattori(ヤスデゴケ科)
Frullania duthiana Steph. var. appendiculata Hattori(ヤスデゴケ科)
Frullania duthiana Steph. var. laevis Hattori(ヤスデゴケ科)
Frullania rhystocolea Herz. var. parva Hattori(ヤスデゴケ科)
Gymnomitrion obtusilobum N. Kitagawa(ミゾゴケ科)
Gymnomitrion papillosum N. Kitagawa & Hattori(ミゾゴケ科)
Herberta giraldiana (Steph.) Nichols. var. verruculosa Hattori(キリシマゴケ科)
Herberta pseudoceylanica Hattori(キリシマゴケ科)
Homaliodendron sphaerocarpum Noguchi(ヒラゴケ科)
Horikawaella grosse-verrucosa Amakawa & Hattori(ツボミゴケ科)
Jungermannia flaccidula Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia glauca Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia koreana (Steph.) Amakawa var. orbiculata Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia limbatifolia Amakawa var. radicellosa Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia ohbae Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia pyriflora Steph. var. gracillima Amakawa(ツボミゴケ科)
Jungermannia saccaticoncava Amakawa(ツボミゴケ科)
Marchantia papulosa Amakawa(ゼニゴケ科)
Marchantia togashii Amakawa(ゼニゴケ科)
Marsupella nitida N. Kitagawa(ミゾゴケ科)
Metzgeria harae Kuwahara(フタマタゴケ科)
Metzgeria involvens Hattori(フタマタゴケ科)
Metzgeria kanaii Kuwahara(フタマタゴケ科)
Nardia flagelliformis Inoue(ツボミゴケ科)
Nardia nepalensis Amakawa(ツボミゴケ科)
Nechera bhutanensis Noguchi(ヒラゴケ科)
Plagiochila alata Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila biloba Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila harae Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila neorupicola Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila pseudopoeltii Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila semidecurrens (Lehm. & Lindenb.) Lehm. & Lindenb. var. longifolia Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila seminuda Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila togashii Inoue(ハネゴケ科)
Plagiochila zongiensis Inoue(ハネゴケ科)
Ptychocoleus sikkimensis Mizutani(ヒメウルシゴケ科)
Scapania bhutanensis Amakawa(ヒシャクゴケ科)
Scapania harae Amakawa(ヒシャクゴケ科)
Scapania pseudoferruginea Amakawa(ヒシャクゴケ科)
Sphagnum nepalense H. Suzuki(ミズゴケ科)
Sphenolobopsis himalayensis N. Kitagawa(イチョウウロコゴケ科)

■Lichenes(地衣類)
Alectoria virens Tayl. var. decolorans Asahina(ホネキノリ科)
Anaptychia togashii Kurokawa(ウメノキゴケ科)
Cladonia rangiformis Hoffm. var. pseudofissa Asahina(ハナゴケ科)
Cladonia rappii A. Evans f. sikkimensis Asahina(ハナゴケ科)
Cladonia submultiformis Asahina f. humilis Asahina(ハナゴケ科)
Parmelia flexilis Kurokawa(ウメノキゴケ科)
Parmelia infrima Kurokawa(ウメノキゴケ科)
Usnea bayleyi (Stirt.) Zahlbr. subsp. septentrionalis Asahina(サルオガセ科)
Usnea galbinifera Asahina var. subfibrillosa Asahina(サルオガセ科)
Usnea longissima Ach. subsp. dubia Asahina(サルオガセ科)

 こうした研究を通じてヒマラヤ植物の学術調査の課題はますます多様化し深化している。早急に解決したいテーマだけに限定しても、もはやひとつの調査隊だけではそれを包括できる状況にはない。これまでのインド植物調査に参加したメンバーが新たな研究テーマを掲げ、調査隊を組織するようになった。地域もヒマラヤ西部のインド、パキスタンから中国西南部の雲南・四川などに及んでいる。ちなみに一九八三年以降、一九九六年までに二十一の調査隊を組織し、現地調査を行っている[表3]。


[挿図6]一九八五年−ロルワリン・ヒマール南部地域(中部ネパール)、ショロン・ヒマール(中部ネパール)

1983年7-10月
調査国ネパール
調査地域1)ランタン・ヒマール、2)ロルワリン・ヒマール南部地域(挿図6)、3)ショロン・ヒマール(挿図6)
メンバー大場秀章東京大学総合研究資料館助教授
菊池多賀夫東北大学理学部助教授
若林三千男東京都立大学理学部牧野標本館助教授
鈴木三男金沢大学教養部助教授
黒崎史平頌栄短期大学助教授
能城修一大阪市立大学大学院理学研究科
武 素功中国科学院昆明植物研究所助教授
K. R. Rajbhandariネパール王立薬用植物研究所次席研究官


[挿図7]一九八八年−アルン川−マカルー・ベース・キャンプ(東部ネパール)

1988年6-9月
調査国ネパール
調査地域1)アルン川-マカルー・ベース・キャンプ(挿図7)欧文・0514、2)ポカラ-カリガンダキ、3)シヴァプリ保護林
メンバー鈴木三男金沢大学教養部助教授
黒崎史平頌栄短期大学助教授
前田禎三宇都宮大学農学部教授
南木睦彦流通科学大学助教授
門田裕一国立科学博物館研究官
鳴橋直弘富山大学理学部助教授
渡辺隆一信州大学教育学部助手
能城修一大阪市立大学大学院理学研究科博士課程
池田 博東京大学総合研究資料館(理学系研究科博士課程)
M. N. Subediネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官


[挿図8]一九八五年−ロルワリン・ヒマール南部地域(中部ネパール)、ショロン・ヒマール(中部ネパール)

1990年7-9月
調査国ネパール
調査地域1)アルン川-シプトン峠(挿図8)、2)シヴァプリ保護林
メンバー南木睦彦流通科学大学助教授
杉田久志岩手大学農学部演習林助手
池田 博東京大学総合研究資料館(理学系研究科博士課程)
高山晴夫鹿島技術研究所研究員
八木浩司防衛大学助教授
M. N. Subediネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官
宮本 太東京農業大学一般教育助手(随伴)


[挿図9]一九九一年−ジャルジャル・ヒマール(東部ネパール)

1991年7-8月
調査国ネパール
調査地域ジャルジャル・ヒマール(挿図9)
メンバー大場秀章東京大学総合研究資料館助教授
寺島一郎東京大学理学部助手
秋山 忍東京大学理学部附属植物園教務職員
若林三千男東京都立大学理学部牧野標本館助教授
菊池多賀夫東北大学理学助教授
能城修一大阪市立大学大学院理学研究科
大森雄治横須賀市立博物館学芸員
増沢武弘静岡大学理学部助教授
池田 博東京大学総合研究資料館(理学系研究科博士課程)
M. N. Subediネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官


[挿図10]一九九一年−最西地域(西部ネパール)

1991年7-9月
調査国ネパール
調査地域最西地域(挿図10)
メンバー鈴木三男金沢大学教養部助教授
黒崎史平頌栄短期大学助教授
八田洋章国立科学博物館研究官
御影雅幸金沢大学薬学部助教授
高山晴夫鹿島技術研究所研究員
宮本 太東京農業大学一般教育助手
寺田和雄金沢大学教養部(理学系研究科修士課程)
K. R. Rajbhandariネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官


[挿図11]一九九一年−ジュムラ及びドルパ地域(中部ネパール)

1991年9-10月
調査国ネパール
調査地域ジュムラ及びドルパ地域(挿図11)
メンバー南木睦彦流通科学大学助教授
杉田久志岩手大学農学部演習林助手
門田裕一国立科学博物館研究官
高橋 晃兵庫県立人と自然の博物館教授
津田 智東北大学理学部大学院生
八木浩司防衛大学助教授
米林 仲千葉県立中央博物館学芸員
K. K. Joshiトリブヴァン大学植物学部助教授


[挿図12]一九九一年−西部(ブータン)

1991年9-10月
調査国ブータン
調査地域西部(挿図12)
メンバー鈴木三男金沢大学教養部助教授
御影雅幸金沢大学薬学部助教授
秋山 忍東京大学理学部附属植物園教務職員
能城修一森林総合研究所研究官


[挿図13]一九九二年−東ネパ−ル(東部ネパール)

1992年5-7月
調査国ネパール
調査地域東ネパール(挿図13)
メンバー鈴木三男金沢大学教養部助教授
秋山 忍東京大学理学部附属植物園教務職員
能城修一森林総合研究所研究官
木場英久東京大学総合研究資料館(理学系研究科研究生)
Nabin Acharyaネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官
K. R. Rajbhandariネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官


[挿図14]一九九二年−ランタン・ヒマール(中部ネパール)

1992年7-8月
調査国ネパール
調査地域ランタン・ヒマール(挿図14)
メンバー高山晴夫鹿島技術研究所研究員
高槻成紀東北大学理学部助手
星野卓二岡山理科大学助教授
八田洋章国立科学博物館研究官
宮本 太東京農業大学一般教育助手
新井勝利東京農業大学学生
M. N. Subediネパール国立資源植物・森林研究所次席研究官


[挿図15]一九九二年−ギルギット及びスカルド地域(パキスタン)

1992年7-9月
調査国パキスタン
調査地域ギルギット及びスカルド地域(挿図15)
メンバー大場秀章東京大学総合研究資料館助教授
遠藤康弘東京大学総合研究資料館客員研究員
Abdur Rahman Begペシャワール大学名誉教授
Abdur Rashid東京大学総合研究資料館(理学系研究科博士課程)
Furrukh Hussainペシャワール大学植物学部教授
Mohammad Yousafバヌー上級大学大学院


[挿図16]一九九四年−ガネッシュ・ヒマール(中部ネパール)

1993年6-8月
調査国パキスタン
調査地域スカルド地域
メンバー高槻成紀東北大学理学部助手
高山晴夫鹿島技術研究所研究員
宮本 太東京農業大学一般教育助手
池田 博兵庫県立人と自然の博物館学芸員
佐藤雅俊東北大学理学部大学院生
I. Ilahiペシャワール大学植物学部教授
Furrukh Hussainペシャワール大学植物学部教授

1993年6-8月
調査国ネパール
調査地域ガネッシュ・ヒマール(挿図16)
メンバー宮本 太東京農業大学農学部講師
秋山 忍東京大学理学部附属植物園教務職員
池田 博兵庫県立人と自然の博物館学芸員
塚谷裕一東京大学分子細胞生物学研究所助手
天野 誠千葉県立中央博物館学芸員
K. R. Rajbhandariネパール国立資源植物研究所次席研究官


[挿図17]一九九四年−マナスル及びアンナプルナ・ヒマール(東部・中部ネパール)

1994年7-9月
調査国ネパール
調査地域マナスル及びアンナプルナ・ヒマール(挿図17)
メンバー鈴木三男東北大学理学部助教授
御影雅幸金沢大学薬学部助教授
能城修一森林総合研究所研究官
依田清胤石巻専修大学理工学部助手
梶田 忠東北大学理学部大学院生
近藤直子金沢大学薬学部大学院生
藤井紀行金沢大学理学部大学院生
Nabin Acharyaネパール国立資源植物研究所次席研究官
Lajmina Joshiネパール国立資源植物研究所次席研究官


[挿図18]一九九五年−中甸(中国)

1994年9-10月
調査国中国
調査地域中甸−徳欽(挿図18)
メンバー大場秀章東京大学総合研究資料館助教授
秋山 忍東京大学理学部附属植物園教務職員
池田 博兵庫県立人と自然の博物館学芸員
武 素功中国科学院昆明植物研究所助教授
成  暁中国科学院昆明植物研究所助手


[挿図19]一九九五年−ヒンクー及びフンクー渓谷地域(東部ネパール)

1995年7-9月
調査国ネパール
調査地域ヒンクー及びフンクー渓谷地域(挿図19)
メンバー宮本 太東京農業大学農学部講師
池田 博兵庫県立人と自然の博物館学芸員
天野 誠千葉県立中央博物館学芸員
小松智彦東京大学理学系研究科修士課程
新井勝利東京大学総合研究博物館客員研究員(東京農業大学大学院)
Chudamani Joshiネパール国立植物資源研究所次席研究官


[挿図20]一九九五年-ランタン・ヒマール(中部ネパール)

1995年7-8月
調査国ネパール
調査地域ランタン・ヒマール(挿図20)
メンバー星野卓二岡山理科大学助教授
高槻成紀東京大学農学部助教授
大森雄治横須賀市立博物館学芸員
木場英久神奈川県立自然史博物館学芸員
佐藤雅俊帯広畜産大学畜産環境科学科助手
淡賢太郎岡山理科大学理学部大学院生
C. K. P. Rauniyarネパール国立資源植物研究所研究官
Puskhar Shresthaネパール国立科学技術委員会(NCST)


[挿図21]一九九五年−カリガンダキ地域(中部ネパール)

1995年9-11月
調査国ネパール
調査地域1)カリガンダキ地域(挿図21)、2)パルサ野生生物保護区、3)コシタップ野生生物保護区
メンバー御影雅幸金沢大学薬学部助教授
鈴木三男東北大学理学部助教授
梶田 忠東北大学理学部大学院生
近藤直子金沢大学薬学部大学院生
米倉浩司東北大学理学部大学院生
Pawan R. Shakyaネパール国立科学技術委員会(NCST)他七名

1996年1月
調査国ネパール
調査地域チトワン国立公園
メンバー鈴木三男東北大学理学部助教授
御影雅幸金沢大学薬学部助教授
高橋 晃兵庫県立人と自然の博物館教授
依田清胤石巻専修大学理工学部助手
黒沢高秀東北大学理学部大学院生
Paresh Lacoulトリブヴァン大学植物学部助教授
Nabin Acharyaネパール国立資源植物研究所研究官


[挿図22]一九九六年-維西-麗江-郷城-稲城-大雪山(中国)

1996年7-9月
調査国中国
調査地域チトワン国立公園
メンバー大場秀章東京大学総合研究博物館教授
菊池多賀夫岐阜大学流域環境研究センター教授
秋山 忍国立科学博物館研究官
若林三千男東京都立大学理学部牧野標本館助教授
池田 博兵庫県立人と自然の博物館学芸員
高山晴夫鹿島技術研究所研究員
塚谷裕一東京大学分子細胞生物学研究所助手
宮本 太東京農業大学農学部講師
武 素功中国科学院昆明植物研究所助教授
楊 永平中国科学院昆明植物研究所助手


[挿図23]一九九六年−カリガンダキ地域(中部ネパール)

1996年7-8月
調査国ネパール
調査地域カリガンダキ地域(挿図23)
メンバー星野卓二岡山理科大学教授
三好教夫岡山理科大学理学部教授
高槻成紀東京大学農学部助教授
天野 誠千葉県立中央博物館学芸員
木場英久神奈川県立自然史博物館学芸員
佐藤雅俊帯広畜産大学畜産環境科学科助手
淡賢太郎岡山理科大学理学部大学院生
K. R. Rajbhandariネパール国立資源植物研究所研究官
Puskhar Shresthaネパール国立科学技術委員会(NCST)

 日本の多くの研究者がヒマラヤ植物の研究に参加することで、ヒマラヤの植物に関係した情報も急激に増えた。情報の交換、調査の具体化、研究成果の討議などを促進することを目的に、一九八五年に「ヒマラヤ植物研究会」が組織された。これは世界初のヒマラヤ植物研究のための組織であり、ヒマラヤの植物に関心のある世界の植物学者が参加している。その機関誌Newsletter of Himalayan Botany(年二回刊行)はすでに二〇号を刊行するに至っている。

 なお、インド植物調査が一貫して努めてきた各調査地域の植物相研究は、その後の調査隊にも引き継がれており、解析のための資料としての標本収集を行っている。その努力が本博物館におけるヒマラヤ植物標本の充実を支えているのである。また、重複標本はネパールなどのヒマラヤ地域の研究機関に寄贈する一方、ロンドン自然史博物館、エディンバラ植物園、ハーヴァード大学、昆明植物研究所などに送られ、研究資料の相互交換の推進に用いられている。こうした資料交換によって本博物館の収蔵標本には十九世紀以来のロンドン自然史博物館やエディンバラ植物園などの調査隊が収集した標本の重複品が多数含まれている。

 一九六〇年代当初、植物学的に未知のことが多かったヒマラヤだが、以上述べてきたような研究を通じて解明された事実も次第に数を増している。植物の進化や多様性などの研究領域でヒマラヤが大きな空白地帯であったことはすでに過去のこととして語ることができるといってよい。





489-ナルコユリの一種、Polygonatum singalilense H.Hara、種子植物・ユリ科、シッキム、Migothang-Nayathang、標高3300-3900m、1960年6月1日採集(原寛ら714)、植物部門

490-タケシマランの一種、Streptopus parasimplex H.Hara & H.Ohashi、種子植物・ユリ科、ネパール東部、Thudam、標高3400m、1972年6月22日採集(金井弘夫ら723120)、植物部門


491-タネツケバナの一種、Cardamine nepalensis N.Kurosaki & H.Ohba、種子植物・アブラナ科、ネパール東部、Serdingma-Dubikharka、標高3400-3720m、1985年7月7日採集(大場秀章ら8570258)、植物部門

494-イチリンソウの一種、Anemone fuscopurpurea H.Hara、種子植物・キンポウゲ科、ネパール東部、Banduke Pokhari-Saju Pokhari、標高4000-4200m、1972年6月15日採集(金井弘夫ら721252)、植物部門



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