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[第二部 コンテンツ]

鉱物


現在までに知られている天然に産する鉱物は3600種を超え、毎年50以上の新鉱物が記載されている。鉱物は地球のみならず太陽系を構成する無機固体物質の基本単位であり、地球を含む太陽系の進化の過程を明らかにするための我々が手にすることが出来る唯一つの物質である。鉱物部門では、地球上に産する天然の鉱物や地球圏外物質である隕石中の鉱物を対象に、X線解析・透過型電子顕微鏡・走査型電子顕微鏡などの先端的な物質科学的手法を駆使して、その組成・構造・微細組織などを手掛かりに鉱物の形成過程を研究している。そこで得られた知見を基にして太陽系が誕生して以来の46億年の物質進化の歴史を、その基本構成物質である鉱物から明らかにしようとしている。さらに進化の結果、太陽系で唯一つ生命体が活動している地球表層において、現在進行形である地球表層環境下での鉱物の風化・変質過程や生体内で形成される鉱物なども太陽系の物質進化の一環としてとらえ、幅広い視野から研究が行われている。

写真1 Wakabayashiliteの標本若林弥一郎博士
写真1 Wakabayashiliteの標本若林弥一郎博士
写真2 日本式双晶した水晶写真3 Allende隕石
写真2 日本式双晶した水晶写真3 Allende隕石

鉱物部門は「若林標本」と名づけられた世界的な鉱物コレクションを所有しているほかに、長年に渡って収集した研究用の鉱物標本を多数所有している。これらの標本は、研究者の要望に応じて研究用試料として提供されている。収蔵する全標本数は950種、約2万3000点に上る。特に、若林標本は三菱鉱業の若林弥一郎博士が収集した182種1932点(約1000点の未分類の試料を除く)におよぶ日本・朝鮮・中国を中心とした産地の鉱物コレクションであり、後に東京大学に寄贈されたものである。アマチュアの個人コレクションとしては世界的で、このコレクションについて1974年にカタログが作成され東京大学総合研究資料館(現東京大学総合研究博物館)から出版された(定永両一・豊遥秋: The Wakabayashi Mineral Collection, Bulletin NO.7, The University Museum, The University of Tokyo, 1974)。写真1は、若林博士に敬意を表して名づけられた群馬県西牧鉱山産のWakabayashiliteの標本である。写真中に見られる黄色の針状の結晶がWakabayashilite, (As, Sb)11S18,である。また写真2は若林標本中の一つである双晶した水晶の標本である。この双晶は「日本式双晶」として知られており、山梨県乙女鉱山で産出した大型結晶である。

また現在、東京大学大学院理学系研究科鉱物学専攻の協力の下に非南極産の隕石の収集を行っている。未だ収集標本数は130点余りと数は少ないが、太陽系物質進化の観点から進化過程を代表する隕石が集められている。写真3は、太陽系物質進化の初期の情報を有すると考えられている炭素質コンドライトと呼ばれる始源的隕石の代表格であるAllende隕石である。1969年にメキシコに落下した隕石であり、この隕石によって太陽系物質進化の研究は大きく飛躍したともいえる貴重な隕石である。

(田賀井 篤平)

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