600万年前の人類祖先は、DNAのデータと矛盾しないの?



 化石に基づく最古の確かな人類祖先は、長らく1990年ごろまで、いわゆるルーシーの種として知られているアウストラロピテクス・アファレンシス、300万から400万年前の猿人でした。当時、DNAの比較からチンパンジーと人類の分岐が400万から500万年前ぐらいとされていました。440万年前のラミダス猿人が発見されると、その原始的な側面から、形態的にはかなり共通祖先に近いだろうとの予測がたち、分岐年代が500万年であってもおかしくないとされました。といいますか、私自身がそう発言してきました。2000年以降になると、ラミダス以上に犬歯が類人猿的な人類祖先が発見されました。オロリン、カダバ、それとサヘラントロプスです。年代は少なくとも600万年前、場合によっては700万年前までさかのぼるとされています。
 では、DNAのデータはどうなのか?その後調べられている遺伝子の数も増え、ミトコンドリアだけでなく核DNAのデータも増しています。

その結果、一つの数字を出すとすれば、やはり500万年前ごろの分岐、とのことのようです。ですが、これはオランウータンの系統の化石の最古の年代値から、オランウータンとヒトの分岐を1300万年前とした場合の話です。ですので、あくまで最小値といえます。もし、オランウータンの分岐が、大型類人猿が初めてアジアに進出したときとすると、1600万年前ごろになります。系統としては、それ以前に分離していてもおかしくない訳ですから、仮に1800万年前ごろの可能性が十分あるとのことです。そうすると、500万年前の分岐の推定年代が700万年前になります。これは単に化石記録からのキャリブレーションの不確かさによる違いですから、そのほかの不確定要素を加味したならば、ヒトとチンパンジーの分岐年代は、ざっくりと800万年前を超えることも可能といえるのではないでしょうか。


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