第2部 展示解説 動物界

哺乳類の多様性と
標本から読み取ること

 

 

哺乳類の多様性

 哺乳類は大きく 4群 ( 亜鋼 ) に分類される。ただしこ のうち 2つは化石で知られているだけである。現生哺乳類には原獣類 ( 単孔目だけからなる ) と真獣という 2つの亜網が区分される ( 表 1) 。このように単孔目は他の哺乳類とは大きく隔たったグループだといえる。真獣亜綱には 3群があり、このうち 1群は絶滅して現存し ない。残りの 2群が後獣下網と正獣下網で、前者には有袋目だけが属し、その他のすべては後者に属す。私 たちがイメージする哺乳類の殆んどはこの仲間で 18の目に分類される。哺乳類の系統・分類は現在進行形で異なる見解が提唱されている (例えば Lieu et al., 2001, Murphy et al.,2001,Springer et al., 2004) 。ここでは原則として遠藤・佐々木 (2001) によった。動物名は、 日本産は阿部ら (1994) 、外国産はとくに断らないかぎ り今泉 (1988) によった。

単孔目 :

 単孔目はオーストラリア ( ハリモグラはニューギニアにも ) に分布する。カモノハシ科のカモノハシ Ornithorhyunchus anatinus はカモのような嘴をもち、卵を産み、また泌尿生殖器と肛門が分化しない総排出口をもつ。これが「単孔」目という名前の由来である。 これらの性質はまるで鳥を思わせるが、カモノハシは体に羽毛はなく毛が生え、横隔膜があり、ミルクを出し て育児する。ただし乳腺は未発達で汗腺が少し変形 した程度である。このように他の哺乳類にはない特徴をもつ。カモノハシは頭骨もきわめてユニークで、「クチパシ」 に相当する部分が左右に聞いて甲虫のクワガ タムシの顎のようにみえる ( 図 20) 。単孔目のもうひとつの科に属すハリモグラ Tachuglossus aculeatus (図 21)はおもにアリやシロアリを食べるため歯が退化しており、食べたものは口の奥にあるトゲでこすりあわされる。体は長いトゲに被われており、強力な前脚で土を掘るのが得意なので、危険を感じると背中だけを地面に残して体じゅう地面にもぐってしまうことができる。

 

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