第2部 展示解説 動物界
魚類の多様性

 

ニシン目 Clupeiformes [ 2亜目 5科約 83属約 357種 ]

 一般に体は細長く、側偏する。胸鰭は低位で、腹縁近くにある。上顎の縁辺はほとんど主上顎骨によって縁どられる。副蝶形骨に歯はない。ほとんどの種で体の腹縁の正中線に沿って、腹鰭の前後まで稜鱗が並ぶ。鰾は細管によって内耳と連絡する。ほとんどの種は、 背側が青く、腹側が銀白色である。仔魚は半透明で、「シラス」 と呼ぱれる。 沿岸から沖合の表層で群を作り、主としてプランクトンを摂食する。ほとんどが海産であるが、淡水産もわずかにいる。遡上回避するものもいる。最古の化石は白亜紀前期のものである。

 

デンティケプス亜目 Denticipitoldei [ 1科 1属 1種 ]

 現世種としては Denticeps clupeoides ( デンティケプス科 Denticipitidae) のみが知られている。頭蓋骨の表面は小さい突起で覆われる。体側に側線がある。 6cm ぐらいまでにしかならない。ナイジェリアとカメルーン沿岸の河川の淡水域にのみ生息する。

 

ニシン亜目 Clupeoidei [ 4科約 82属約 356種 ]( 図 13)

 体側には側線がない。多数の種を含む科はこシン科 ( 約 181種)とカタクチイワシ科 Engraulidae(139種) で、多くの種が漁獲対象である。

 

ネズミギス目 Gonorhynchiformes [ 3亜目 4科 7属約 35種 ]

 口は小さく、両顎に歯がない。最前部の 3個の脊椎骨は変形しており、これはウェーパー器官 ( コイ目を参照 ) の前駆的な構造と考えられている。このグループの最古の化石は白亜紀前期の地層から発見 工ーて .l る。

 

サバヒー亜目 Chanoidei [ 1科 1属 1種 ]( 図 14)

 サバヒー chanoss chanos( サパヒー科 Chanidae) のみが含まれる。 体は側扁し、口は端位。上顎は伸出不可能。鰾がある。円鱗。インド・太平洋の熱帯・亜熱帯海域や汽水域、ときに淡水域に生息する。体長は1.8m までになるが、ふつうは 1m ぐらいである。

 

ネズミギス亜目 Gonorhynchoidei [1科 1属約 6種 ]( 図 15)

 体は細長く、口は下位。上顎は伸出不可能。尖った吻の先端に 1本の鬚がある。鰾はない。ネズミギス科 Gonorhynchidae のみから なる。インド〜太平洋、まれに南部大西洋海域に分布する。

 

クネリア亜目 Knerbidei [ 2科 5属 28種 ]

 鰾をもつ。これを空気呼吸器官として使用している種もある。体長 16cm までにしかならない。アフリカの熱帯の淡水域とナイル川に分布する。

 

コイ目 Cypriniformes [ 5科約 279属約 2662種 ]

 胸鰭は低位で、腹鰭は腹位。脂鰭はない。顎に歯をもたない。頭部にはふつう鱗はない。アジア・北アメリカ・アフリカなどで繁栄しているグループであるが、南アメリカにはいない。ほとんどすべて淡水産。 最古の化石は前期始新世の地層から発見されている。コイ目魚類には、ウェーパー器官と呼ばれる感覚器官がある。これは、脊椎骨の最前部の 4個が変形してできたもので、内耳と鰾をつないでおり、鰾の振動を内耳ヘ伝達して聴覚の補助作用をする。コイ目だけでなく、カラ シン目 Characiformes・ナマズ目 Siluriformes・デンキウナギ目 Gyrmotiformes 魚類 ( 後述 ) もウェーバー器官をもっているほか、ネズミギス目魚類もその前駆的な構造をもっているので、これら 5目は合わせて骨鰾類 ostariophysans と呼ばれる。
 北アメリカ・アフリカ・ユーラシアの淡水域で夥しく分化したコイ科 Cyprinidae は、魚類最大の科で 2000種以上を含む。極めてまれに汽水域にも生息。この科では咽頭歯がよく発達する。唇は薄く、襞や突起がない。上顎は伸出可能。体長は約 1cm から 3m のものまでいる。
  ユーラシアの淡水域に分布するタニノボリ科 Balitoridae( 約 590種 ) とユーラシアとモロッコの淡水域に生息するドジョウ科 Cobitidae ( 約 110 種 ) も多様化したグループである。

 

カラシン目 Charadomes [ 10科約 237属約 1343種 ]

 この仲間は体形がコイ科魚類に類似するが、ふつう脂鰭をもつことで区別できる。顎には歯がよく発達しており、ほとんどの種が肉食性。口辺に鬚はない。ウェーバー器官 ( コイ目を参照 ) をもっている。最古の化石は後期暁新世の地層から発見されたものである。
  カラシン目の約 1343種のうち約 200種がアフリカに、残りはアメリカ合衆国の南西部、メキシコ、中央・南アメリカに分布する。すべて淡水産。最も多様化している科はカラシン科 Characidae(900 種以上 ) で、アメリカ・テキサス州の南西部、メキシコ、中央・南アメリカそしてアフリカの淡水域に分布している。

 

ナマズ目 Siluriformes [ 34科約 412属約 2405種 ]

 体表は滑らかか、硬い骨板で覆われる。多くの種では、背鰭と胸鰭の前部に棘のような軟条がある。これらの棘 ( 主に胸鰭の赫 ) にはし ばしば .毒がある。指鰭はふつうある。ウェーパー器官 ( コイ目を参照 ) を もつ。全大陸に分布している ( ただし、南極大陸は化石記録である)。 最古の化石は白亜紀後期のものである。
  ほとんどの種が淡水域に分布するが、ハマギギ科 Arildad 約 120 種 ) とゴンズイ科 Plotosidae( 約 32種 ) は主として海産種からなる。しかし、両科は汽水域や沿岸域、ときに淡水域だけでみられる種も含む。約 2405 種のナマズ目魚類のうち、約 1500 種は新世界に分布する。
  種数が多い科は、ロリカリア科 Loricariidae( 約 550種、パナマと南アメリカの淡水域 ) 、ピメロドゥス科 Pimelodidae( 約 300種、中央・南アメリカの淡水域 ) 、ギギ科 Bagridae( 約 210 種、アフリカとアジアの淡水域 ) などである。

 

デンキウナギ目 Gymnotiformes [ 2亜目 6科 23属約 62種 ]

 体は細長く、ウナギ形。背鰭と腹鰭はない。尾鰭はないか、あっても小さい。臀鰭の基底は極端に長く、その前端は胸鰭の近くやもっと前にある。このため、旺門はふつう胸鰭の下より前にある。ウェーパー器官 ( コイ目を参照 ) をもっている。筋肉や神経 ( アプテ口ノートウス科 Apteronotidae のみ ) の細胞から変化した発電器官をもつ。
  南・中央アメリカの淡水域にだけ分布し、夜行性。最古の化石はボリビアの後期中新世の地層から発見されている。

 

ステルノピュグス亜目 Sternopygoldei [ 4科 21属約 58種 ]

体は側扁している。ヒュポポームス科 Hypopornidae( 約12種、南 アメリカの淡水域 ) には鰓で空気呼吸をするものがいる。

 

デンキウナギ亜目 Gymnotoidei [ 2科 2属 4種 ]( 図 16)

 体は円筒形か、または円筒形に近い。
 代表的な種はデンキウナギ Electrophorus electricus( デンキウ ナギ科 Electrophoridae の唯一の種、南アメリカのオリノコ川とアマゾン川に生息 ) である。体は円筒形で、鱗がない。発電力の大きい魚類の 1種で、大きな発電器官をもっている。デンキウナギは、敵からの防御や餌生物を攻撃するために放電を利用している。口の中で空気呼吸を行うことができる。体長は 2m以上にもなる。

 

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