トロン電脳都市
はじめに
トロンプロジェクトは、「どこでもコンピュータ」の社会 —身の周りのさまざまな
「物」にコンピュータが組み込まれ、それらが互いにネットワークによって接続されて
協調動作しながら生活のあらゆる場面をサポートするようになる来たるべき未来社会—
において必要となる基盤技術の確立を目指している。
このために、 1000 個のコンピュータが組み込まれたトロン電脳住宅、さらに大規模
なトロン電脳ビルなどを提案し、研究開発、実験を行っている。そして、この、「どこ
でもコンピュータ」環境の最大の応用として、都市におけるコンピュータの応用研究を
行っている。これがトロン電脳都市プロジェクトである。
具体的なケーススタディとして、 1989 年より約 2 年間、千葉県中央部の市原市を中
心とする約 300 ヘクタールの丘陵地帯を対象として、都市インフラや都市のインテリ
ジェント化に、トロンを応用し、あらゆるレベルの情報システムを統合するための研究
を行った(千葉トロン電脳都市)。
現在は、「人にやさしい」電脳都市構築のために、ヒューマンインタフェース、情報イ
ンフラストラクチャなどを中心として、制度も含めた都市のいろいろな構成要素のガイ
ドライン作りを進めている。
以下は千葉トロン電脳都市の基本コンセプトおよび導入機能である。
基本コンセプト
電脳の、電脳による、人間のための都市
無数のインテリジェントオブジェクトとコミュニケーションマシンが、超機能分散シス
テムによって統合される未来都市
分散都市
- 機能分散
- 多様なエネルギーの利用
コンピュータによるプロセスの洗練による可能になる低密度エネルギーの利用。
安全性の向上
機能集中による効率化
- 空間分散
- 安全性の向上
- 流通エネルギーの減少
消費地での生産
- 時間分散
- 協調分散
自然との調和・環境保護・省資源
省エネルギー・リサイクル
- 自然破壊をさけ、テクノロジーと自然環境が調和した都市
- 太陽熱・コジェネレーションなど多様かつ効率的なエネルギー利用
- 協調システムやリサイクルによってゴミ・下水・排気ガスなどを減らし、
環境汚染を防止。
- コンピュータの目立たない都市
- 風・緑・水などと触れ合える都市
快適性・安全性・弱者への配慮
- 超機能分散システムによって制御される高機能な情報・物流・エネルギー・交通ネッ
トワーク
- 各人所有の電子カードと随所に設置された端末機によって制御されるきめ細やかな
快適さ
- 交通事故を未然に防ぐインテリジェント道路や電子カード利用のセキュリティシス
テム
- 幼児・高齢者にも容易な操作性の実現
知的生産性の向上・知的刺激
- ◆教育・研修・展示・交流・健康保持施設など、知的創造のための充実した支援機
能
- ◆知的な刺激を与えるアミューズメント施設による心身のリフレッシュとストレス
解消
導入機能
知的創造活動のための基本機能
インテリジェントオフィスの提供
- 情報・通信システム、 TRON カード、 BTRON マシンによる各種情報サービス
- 移動の自由
- 物流分散
- 最適なオフィスレイアウトとフロア分割
- 多様かつ最適な環境の提供
- ホテル機能
知的創造活動のための支援機能
共同利用施設とサービスの提供
- 会議・商談・プレゼンなどのための機能
- 教育・研修・展示・交流などのための機能
- 寮・社宅の提供
- 専門情報収集などのための機能
- オフィス隣接の 24 時間営業の生活利便機能
- ハイテク技術者のための心身の健康管理機能
- オフィス管理機能
周辺機能
居住・生活施設とサービスの提供
- 快適な住宅
- 機能性の高さと質の高さの 2 系統の購買・飲食機能
- 知的アミューズメント機能
- 機能的な健康医療保持サービス
- 豊かな自然環境と充実したスポーツ・リゾート機能
- 来訪者などのための宿泊機能