オーストラリア、ビクトリア州
清水正明
総合研究資料館、岩石z床部門
乾燥地域、特に砂漠では表層水は乾期には干上り、降雨の後には湖となるプラヤ湖など限られた場所にしか存在しない。砂漠の年降水量はもちろん小さいが、数回はまとまった降雨がある。この大部分は地表から蒸発していくが、一部分は深部に浸透し地下水となる。この地下水が流動してプラヤ湖やオアシスなどでは地表に現れる。また、一部の地下水は地表に向って上昇し、蒸発していく。
砂漠のバラ(roses du d'esert)は上昇地下水が蒸発する際に溶存成分が結晶化したものである。この地下水が上昇する機構は一般には毛細管現象によると考えられている。また、地下水はこの循環の過程で、砂粒に付着している種々の塩類を溶かし込んで高濃度の溶液となっていく。地下水が蒸発の際、塩類が結晶として沈澱したのが砂漠のバラで、ふつうは地表下数センチ〜数メートルのところに多く生成するといわれている。この機構で生成する鉱物は方解石(CaCO3)や石膏(CaSO4・2H2O)が最も多いが、その他の鉱物もみられる。
本標本はオーストラリア、ビクトリア州産のもので本館に寄贈されたものである。結晶はすべて石膏であり、最大なものは長さ5センチ、幅1センチ、厚さ4ミリある。
(歌田 実)