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岩石


9 ノーラット山のペリドタイトゼノリス


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オーストラリア、メルボルン西部、南オーストラリア火山域
鳥海光弘
1991年10月採集
総合研究資料館、岩石z床部門

オーストラリア南部のメルボルンから南氷洋沿いの地域は南部火山地域といわれて、多数の単成火山が点在している。単成火山はちょうど伊豆半島の大室山や阿蘇の米塚のように小規模で円錐状の比較的短時間につくられた火山である。南部火山地域の火山活動は約3000万年前から1000万年前に起こったが、その起源は、その当時のオーストラリア大陸のマントル内で起こった大規模な上昇流(プルームと呼ばれる)によって、マントル上部のプルーム頭から発生したマグマの噴火である。マグマは約1200〜1400度でマントル物質が融解したもので、たいていは周囲のマントルより軽いので、地表にまで一気に吹き出す。このとき、周囲のマントルの物質であるペリドタイトをマグマが取り込んでしまい、そのまま地表まで運んでしまうことがある。これをペリドタイトゼノリスと呼んでいる。ゼノリスの語源はギリシャ語のゼノスとリトスであり、異邦岩程度の意味である。

展示標本の上部マントルの岩石は、かんらん石(ペリドート)というオリーブ色の結晶とやや灰色の斜方輝石、および、きれいな緑色をした単斜輝石が主要な構成鉱物である。このため全体にやや透明感のある緑色を帯びている。ゼノリスは通常周囲をマグマが冷えて固まった火山岩(多くは玄武岩溶岩)によっておおわれている。ペリドタイトゼノリスは世界各地に分布しているので、地球の上部マントルの構造がどのようになっているのかを直接知る有力な標本であり、多くの研究者が研究している。また非常に美しい標本でもある。

(鳥海光弘)


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