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岩石


8 黒雲母花崗岩と菫青石黒雲母
ホルンフェルスの接触部


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茨城県笠間市稲田
総合研究資料館、岩石z床部門

花崗岩(類)とは珪長質深成岩(類)のことである。したがって、花崗岩質マグマが地下で徐冷固結したもので、実際には、石英、アルカリ長石、斜長石、白雲母、黒雲母、角閃石などから構成された優白色粗粒完晶質岩のことである。特徴的に大陸地殻に産出し、地殻進化の鍵をにぎる岩石の一つである。IUGSによる分類では、石英、斜長石、アルカリ長石の量比に基づき、命名される。

わが国でも国土の1割以上をこの花崗岩類が占めている。展示標本の左上半分の優白色部分がそれで、中粒〜粗粒の黒雲母花崗岩である。石材名を稲田石ともいい、主として、正長石、斜長石、石英、黒雲母から構成される。少量ながら、角閃石、褐簾石、くさび石、ジルコン、燐灰石、磁硫鉄鉱、チタン鉄鉱などを含む。また一部の晶洞には、熱水起源の魚眼石、濁沸石、菱沸石、束沸石、方解石などを含むことも知られている。今から約6300万年前に中・古生界に貫入した花崗岩類が冷却固結したものを石切場から切り出し観察しやすくするために表面を研磨してある。被貫入岩の中・古生界との接触部付近には接触変成作用が認められる。また、ホルンフェルス化した砂質—泥質の捕獲岩を多く含み、石灰質の場合には、各種のスカルン鉱物が形成されることがある。

現地の石切場では、水平方向に平べったい形状の捕獲岩塊が数多く観察でき、上昇してくる花崗岩質マグマ中に岩塊が取り込まれ、小さく壊されながら沈んでいく様子がわかる。

展示標本の残りの優黒色部分は、このホルンフェルス化した捕獲岩である。黒色の点紋は菫青石の斑状変晶、また、暗いあずき色を呈した部分は黒雲母が濃集している部分である。花崗岩から連続して、幅数ミリ〜数センチの白色の細脈は、主として石英からなる。捕獲岩のうち、石灰質の部分で脈状あるいはレンズ状にスカルンが形成され、白色の珪灰石、褐色の灰バンざくろ石、ベスブ石、緑色の透輝石—灰鉄輝石などのスカルン鉱物や粒状の灰重石、磁硫鉄鉱などが観察される。

(清水正明)


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