前のページ ホームページ 一覧 次のページ

 

岩石


7 超高圧変成岩のざくろ石巨晶


-16Kbyte image-

イタリア、アルプス、ドラマイラ岩体
渡辺暉夫
1990年9月採集
総合研究資料館、岩石z床部門

1984年に超高圧変成岩が発見されて以来、アジア大陸内陸部とヨーロッパ大陸で次々とコース石を持つ超高圧変成岩が発見され、多くの大陸と大陸が衝突して形成した造山帯の中核にはかなり大規模に超高圧変成帯が広がっていることがわかってきた。超高圧変成作用というのは、石英が高圧力で安定なコース石を含むことで特徴づけられるもので、約70キロメートル以上の深さで500度以上の温度状態で起こる再結晶過程である。ところが、1989年になって、超高圧変成岩からダイアモンドが発見された。そこで、ダイアモンドと石墨の相転移関係から、ダイアモンドを含む超高圧変成岩は、なんと100キロメートルより深いところで起こった変成作用であることが実証された。こうして、地球上の多くの時代で大陸が衝突し、その一部がプレートの沈み込み(サブダクション)にひきずられて、100〜150キロメートル程度まで沈み込んでいったことが示された。問題は大陸地殻が大変に軽いことにある。周囲のマントルは比重は約3.3であり、大陸地殻は約2.7〜2.9である。このためよほどしっかりとプレートと大陸地殻が接合していないと沈み込むことはできない。このような接合の強度は温度や沈み込む速度に関係していて、温度が高いと弱く、したがって、超高圧変成岩はできないらしい。

超高圧変成岩の特徴であるコース石やダイアモンドは、ざくろ石に小さい結晶粒として含まれている。これはざくろ石がコース石やダイアモンドのコンテナとなって地表にでるまでそれらを保護していたからである。ざくろ石はまさに宝石でできた宝石箱であった。

展示標本のざくろ石は、パイロープざくろ石であって、マグネシウムの多いざくろ石である。アルプスのドラマイラ岩体から採取された。中に小さい鉱物がたくさんみえる。これはざくろ石が100キロメートル600度ぐらいで成長するとき、周囲の鉱物を包み込んでしまったものである。このざくろ石は結晶の中心を通るように切断されている。外形はほぼ成長したときの結晶面でおおわれている。

(鳥海光弘)


Copyright 1996 the University Museum, the University of Tokyo
web-master@um.u-tokyo.ac.jp