これも解明できていない重要な問題です。現代人直系の祖先の特徴は、旧人段階と比べたとき、大きな脳そのものではなく、大きな脳が高く丸まった形になっていることにあるようです。そうしたものの最も古い比較的完形の人類化石が、本展示にある16万年前のヘルト人です。
現代人的なホモ・サピエンスと旧人段階の化石とでは、脳の大きさが同じ程度であっても、頭の形が異なり、従って、脳の形も違っていたはずです。脳の各部位の発育パターンが変われば、脳全体の形にも影響する可能性があります。逆に脳の各部位の大きさや機能とは無関係に、例えば、頚部の様々な機能をつかさどる部位の発生パターンが変われば、それらと脳・神経系の発生とのバランスが変わり、二次的に脳の形が変わってしまった、とのこともあり得るでしょう。