第2部 展示解説 動物界
魚類の多様性

 

 ボラ目 Mugiliformes [ 1科約 17属約 66種 ]

 体はやや細長い円筒形。背鰭は 2基で、かなり離れている。前の背鰭は 4本の棘条からなり、後ろは軟条のみからなる。胸鰭はやや高位。 1棘 5軟条の腹鰭は、胸位と腹位の中間にあり、腰帯は擬鎖骨に接していない。側線をもたないかわりに全身の鱗に感覚孔をもっている。水底の表面の小さな藻類や有機物の細片を非常に小さい歯で摂食。これらの消化を助けるために、胃の筋肉が発達していたり、非常に長い腸をもつなど様々な工失が、多くの種でみられる。 最古の化石は前期漸新世のものであるが、耳石は後期始新世の地層から発見されている。
  ボラ科 Mugilidae のみからなる。熱帯から温帯の沿岸域・汽水草に分布するが、いくつかの種は淡水域に生息する。

 

 トウゴロウイワシ目 Atherlniformes [ 3亜目 8科約 47属約 285種 ]

 背鰭はふつう 2基。前の背鰭は弱い棘条からなる。胸鰭は高位。腹鰭は腹位から喉位にあるものまで様々であるが、腹鰭を欠くものもいる。臀鰭はふつう弱い 1棘条から始まる。側線はないかあっても発達が悪い。最古の化石は後期始新世の地層から発見されたものである。

 

 ベドティア亜目 Bedotbidei [ 1科 2属 種 ]

 小さい色鮮やかな魚で、体長 8cm ぐらいまでにしかならない。ベドティア科 Bedotidae のみからなる。マダガスカルの淡水域にだけに生息する。

 

 メラノタエニア亜目 Melanotaenbidei [ 2科 9属約 68種 ]

 メラノタエニア科 Melanotaeniidae 魚類は、 rainbowfishes と呼ばれるほどの色鮮やかな小魚で、水族館でよく飼育されている。

 

 トウゴロウイワシ亜目 Atherinoidei [ 5科約 36属約 208種 ]

 トウゴ口ウイワシ科 Atherinidae( 約 165種 ) はこのグループで最も多様化している。この科の多くの種では、体側に幅広い銀色の帯が縦に走っている。側線はなく、腹鰭はふつう腹位。熱帯から温帯海域に分布するが、 いくつかの種は淡水域に生息する。

 

 ダツ目 Beloniformes [ 2亜目 5科約 38属約 191種 ]

 すべての鰭は軟条のみからなる。背鰭と臀鰭は体の後半にある。腹鰭は腹位で、 6軟条からなる。上顎は伸出不可能。側線は ( もたないものもいる ) 体側の下部を走る。最古の化石は中期始新世の地層から発見されている。

 

 メダカ亜目 Adrianichthyoidei [ 1科 4属 18種 ]

 体に側線はない。最大のものは全長 20cm にもなる。
 メダカ科 Adrianichthyidae 魚類はインドから日本、インド 〜 オースラリア群島の淡水・汽水域に生息する。日本にはメダカ Oryzias latipes のみが分布している。

 

 ダツ亜目 Belonoidei [ 4科約 34属約 173種 ]

 側線は体側の下部を走っているが、側線のないものもいる。このグループの魚類では一生のうち、ある時期には必ず下顎が長く突出する。成魚では両顎の短いトビウオ科 Exocoetidae 魚類も稚魚期には下顎が伸びている。
 種数が多い科は、大西洋・インド洋・太平洋の海域に分布するサヨリ科Hemiramphidae( 約 85種、淡水域にも分布 ) とトビウオ科 ( 約 52種)である。

 

<備考>
1935年理学部動物学科卒業の阿部宗明 (1911-1996) は、先輩の富山 一郎(1936-1981、1931年同学科卒業、スズキ目ハゼ亜目の備考参照 )とともに、学部、大学院を通じて田中茂穂 ( 「まえがき」参照 ) の指導を受けた。田中の影響と思われるが、その分類学的研究の対象は大変幅広かった。その中でフグ類についで精力的に研究したのがトビウオ科魚類であった ( フグ亜目の備考参照 ) 。動物部門は、模式標本を含む、阿部のトビウオ類の研究標本を保管している。

 

 カダヤシ目 Cyprinodontiformes [ 2亜目 8科約 88属約 807種 ]

 各鰭は軟条のみからなる。背鰭は体の中央より後方にある。腹鰭は腹位。多くの観賞魚が含まれる。この仲間は生物学の実験魚としても使用されている。卵生と胎生のものがいる。最古の化石は後期暁新世の地層から発見されている。全世界の淡水・汽水域あるいは沿岸海域に分布する。

 

  アプロケイルス亜目 Aplochelloidei [ 1科 20属約 310種 ] アプロケイルス科

 Aplocheilidae のみからなり、アフリカ・アジア 南部・北アメリカ南部から南アメリカの淡水域、まれに汽水域に分布 する。多くの種が観賞魚として利用されている。生物学的に興昧深 いものも含まれており、たとえば、フロリダ半島南部と西インド諸島に生息する Rivulusmarmoratus は、自家受精できる雌雄同体の魚と して有名である。

 

 カダヤシ亜目 Cyprinodontoidei [ 7科約 68属約 497種 ]

 多様性が高い科はカダヤシ科 Poecillidae( 約 293 種 ) で、アメリ カ東部から南アメリカ・アフリカの淡水・汽水域に分布する。いくつかの種は蚊の退治のために世界各地に放流された。アメリカ・テキサスからメキシコにかけて生息する Poecilia formosa は最初に発見された雌だけからなる脊椎動物である。現在、日本でみられるカダヤシ Gambusia affinis とグッピー Poecilia reticulata は、それ ぞれもともと「蚊の退治」 と「観賞用」 として持ち込まれ、定着したも のである。

 

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