第2部 展示解説 動物界 軟体動物の分類と系統関係 腹足綱 (Class Gastropoda)
直腹足亜網 (Subclass orthogastropoda): Apogastropoda: 吸腔目 (Order Sorbeoconcha): 新生腹足類のうち、原始紐舌類を除いたグループである。外套腔内に水を吸い込むための特別な構造を発達させるという特徴に注目した名前である。その他には、 (1)神経系は側神経節が脳神経節に近く位置する上方近接型 (epithroid) で、食道神経環が狭くなる。 (2) 嗅覚のための感覚器官である嗅検器には Si 細胞がある点が特徴的である。 吸腔目はオニノツノガイ上科 + エンマノツノガイ上科 + タマピ下目 + 翼舌目 + 新腹足下目に 分類されている。オ ニ ノツガイ上科は原始紐舌類と特徴的な構造の精子を共有する点で新生腹 足類の中では原始的な存在である。 また、オニノツノガイ上科とエンマノツノガイ上科は雌が溝状に聞いた生殖輸管をもつ点に特徴がある。 オニノツノガイ上科 Cerithioidea は螺層が細長く、殻高が高く、螺層の巻数が多い殻をもつ科が多い。オニ ノツノガイ科 Cerithiidae の殻は細長く、前端に水管溝 をもつ ( 佐々木 ,2002: 図 2-7) 。浅海の砂底と岩礁に生息する。キリガイダマシ科 Turdtellidae の種は濾過食性で、 オニノツノガイ科と異なり水管溝を欠く。キリガイダマシ類 Turritella ( 佐々木 ,2002: 図 231) は軟らかい海底に浅く埋もれて生活するが、ハズレキリガイダマシ類 Vermecularia では、 成長の途中から固い基質に固着する。フトヘナタリ科 Potamididae とウミニナ科 Batillariidae は河口域や干潟に高密度で生息し、堆積物表面のデトリタスを食べる。ゴマフニナ科 Planaxidae はタマキピ類と同様に潮間帯の岩礁の表面に生息する。スズメハマツボ科 Dialidae はすべて小型種で、海藻上に多い。スナモチツボ科 Scaliolidae ( 図 22A) も全て小型種で、浅海の砂底に生息し、殻の表面に砂粒をつける特殊な習性をもつ。ウキツボ科 Litiopidae は浮遊性で、外洋の表層で生活し、しばしば、 流れ藻にも付着する。ミミズガイ科 Siliquariidae は海綿中に埋もれて、殻口のみを海綿の表面に露出し、鰓の繊毛で浮遊物を集めて食べる (佐々木 ,2002: 図 3- 17) 。 トゲカワニナ科 Thiaridae は淡水〜汽水に生息し、黒く厚い殻皮を被る。カタベガイダマシ科 Modulidae は殻高が低く、他のオニノツノガイ科とは殻形が大きく異なる。 エンマノツノガイ上科 Campaniloidea は 2科からなる。 エンマノツノガイ科 Campanilidae は、 現生種はオーストラリア に生息するエンマノツノガイ Campanile symbolicum ( 佐々木 , 2002: 図 V) 1種である。学名のCampanile は 「鐘楼 (bell tower) 」を意味する。「生きている化石」として知られている。チグサカニモリガイ科 Plesiotrochidae は小型のカニモリガイ型で主に海藻上に生息する。精子の形態がエンマノツノガイに類似するため、エンマノ ツノガイ上科に移された。
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