第2部 展示解説 動物界 軟体動物の分類と系統関係 腹足綱 (Class Gastropoda)
直腹足亜網 (Subclass orthogastropoda): Apogastropoda: かつては「新生腹足類と異旋類」に対して提唱されたグループであったが、Ponder and Lindberg (1997) によって拡大解釈されて「新生腹足類と異鰓類」からなる分類群として再定義された。精子の微細構造に多くの共有派生形質が見られる。 新生腹足上目 (Superorder Caenogastropoda): 動物体の構造は上記の腹足類よりも、高度に再構成され単純化する傾向が見られる。例えば、歯舌は歯の本数が少なく、消化管は腸が短く、配置は単純で心臓を貫通しない。循環器系は左側のみ、腎臓も左のみになり、片側の器官が本来の左右の器官の機能を兼ね備えている。神経系は集中化し、原始的なはしご状の構造は失われる。生殖は体内受精であり、雌雄で異なる複雑な構造を発達させる。 新生腹足上目は、かつて中腹足目 (Mesogastropoda) と新腹足目 (Neogastropoda) に分類されていたグループである。 Ponder and Waren (1988) は中腹足類を原始紐舌目と新紐舌目 (Neotamioglossa) に分け、後者を 3つの亜目(盤足亜目 Dicopoda 、異足亜目 Heteropoda 、翼舌亜目 (ptenoglossa) に分類した。しかし、最近の研究ではそれらの単系統性は否定されている。 Ponder and Lindberg(1997) は、原始紐舌目とオニノツノ ガイ上科、エンマノツノガイ上科及び、 Hypsogastropoda に分類した。 原始紐舌目 (Order ArChitaenioglossa): 他の新生腹足類とは、(I) 頭部の神経系の側神経節が足神経節に近接する下方近接型 (hypoathroid) である。 (2) 嗅検器の微細構造が異なる (Si 細胞がない ) 、の 2 点によっ て区別される (Ponder and Lindberg,1997) 。しかし、 このグループは十分に研究が行われていないため、単系統ではない可能性がある。 リンゴガイ上科 Ampullarioidea は全て淡水に生息する。 タニシ科 Viviparidae は螺塔の高い円錐形の殻をもつ。 雄では右の触角が変形し、交尾の際に雌に精子を渡すための陰茎として機能する。リンゴカイ科 Ampullariidae (図 20B-C) は球形によく膨らんだ殻をもつ。稲の農業害虫として世界的に有名であり、英語では apple snail、日本の通称ではジャンポタニシと呼ばれる。 ヤマタニシ上科 Cyclophoroidea はすべて陸生である。 蓋をもつ点で有肺類の陸生貝類とは異なる。眼は触覚の基部にあり、多くの有肺類のように先端にはない。鰓は失われ、外套腔は肺として機能する。しかし、有肺類のように外套腔が肺嚢としてほとんど閉じることはなく聞いたままである。ヤマタニシ科 Cyclophoridae( 図 20A,21A) は螺塔が低く、熱帯性の種では、 螺管がはずれる種や、さらには呼吸のためのパイプ状の構造をもつものがある (佐々木 ,2002: 図 2-75) 。アズキガイ科Puppidae(図 20D) では、殻口の上下に特徴的な溝状の構造ができる。ムシオイガイ科 Alycaeidae には特別な管状の構造をもつ種があるが ( 図 21B) 、その機能は不明 である。ゴマガイ科 Diplommathidae( 図 21C) は縦方向の繊細な彫刻をもつ。特殊な例では、ノタウチガイ類 Opisthostoma( 佐々木 ,2002: 図 2-12) のように螺管がはずれるものがある。
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