第2部 展示解説 動物界
軟体動物の分類と系統関係

 

軟体動物の定義

 軟体動物の多くは石灰質の貝殻を持ち、「貝類」と呼ばれている。例えば、腹足類の多くは螺旋状に 巻いた殻を持ち「巻貝」と呼ばれ、二枚貝類のすべては貝殻を持つ。しかし、軟体動物には貝殻を 持たないグループもある。例えば、腹足類ナメクジやウミウシ、頭足類のタコなどがその代表的な例 である。ナメクジは貝類には見えないが、カタツムリの軟体を殻から取り出してみれば、ナメクジと基本的な体の構造は一致している。

 軟体動物の完全な定義は難しい。それは、地球上の全種の軟体動物に共通する形質が乏しいからである。軟体動物の各グループごとに体の構造の違いが大きく、そのため軟体動物全体はいくつかの形質の組み合わせによって定義されている。体の体制の違いは、系統関係だけでなく生息環境にも対応しており、例えば、底生と浮遊性、水生と陸生のグループによる違いも見られる。

 一般的な軟体動物の特徴として、下記のような形質があげられている。 (1) 体は左右相称。 (2) 体は伸縮自在で頭部、足、内臓塊に分かれる。 (3) 炭酸カルシウムの殻または赫をつくる。 (4) 腹側に、匍匐のための足がある。 (5) 体の背側は外套膜 (mantle =pallium) に覆われる。 (6) 外套膜は張り出して外套腔 (palliai cavity) または外套溝 (pallial groove) を形成する。 (7) 呼吸または換水のための櫛鰓 (ctenidium) をもつ。 (8) 外套腔内に粘液腺 (mucous tracts) あるいは鰓下腺をもつ。 (9) 嘆いを感じ取るための嗅検器をもつ。 (10) 頭部に餌をかきとるための歯舌をもつ。 (11) 頭部の神経環から 2 対の神経が伸びる (tetrarierous nervous system) 。ただし、これらの形質を全てもつ軟体動物は限られている。上記の形質をもたない軟体動物は祖先種がもっていた構造を 2次的に失ったものと解釈されている。

 

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