巻貝の形
巻貝には様々な形が見られます。ヒラマキガイ科Planorbidacのような円盤形(図2-6)、ニシキウズガイ類Trochusのような円錐形、キヌガサガイ類Xenophoraのような低円錐形、カニモリガイ類Cerithium、タケノコガイ類Terebra、トウガタガイ類Pyramidellaのような塔形(図2-7、2-8)、タマガイ類Naticaやタマゴガイ類Atysなどの球形、マクラガイ類Olivaなどの円筒形、イモガイ類Conusなどのような倒円錐形、ツツミガイSinum、アワビ類Haliotisなどの耳形、ミジンギリツツガイ科Caecidaeなどの筒形などです。螺層が階段状になるチマキボラルThatchetiamirabilis(図XI)は特異な形として古くから有名です。不定形の殻はミミズガイ科Sili-quariidae(図2-9)、ムカデガイ科Vermetidae(図2-10)、キリガイダマシ科Turritellidaeのハズレキリガイダマシ類Vermicularia(図2-11)などに見られます。不定形の貝には螺層が全く重なり合わない殻形態(opencoiling)を持つ種が多くなります。さらに、陸産貝類には殻口がはずれて全く異なる方向を向く種が知られています。ゴマガイ科Diplommatinidaeのノタウチガイ類Opisthos-toma(図2-12)、有肺類のUrocoptidaeにはそのような種が多数含まれています。
笠型貝類(limpet)は螺管の拡大率が極端に大きいため、通常の螺旋形からは大きくはずれてしまっています。笠型貝は殻に引っ込んで蓋をすることを放棄し、ぴったりと岩に付着する戦略を選択した貝類です。殻を隙間無く岩に張り付けることができれば、確かに安全です。ところが、笠型貝にはデメリットもあります。足が短いため、ひっくり返されると二度と起き上がることができません。従って、付着基質から剥されることは笠型貝にとって致命的です。また、軟らかい海底面には棲息することができず、生息環境が制約されることになります。笠型貝類は形態的にも生態的にも特殊化した形のひとつです。
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