特別展の開催に寄せて

北海道常呂町長

井原久敏


  本町と東京大学とのご縁は、常呂遺跡の発掘に始まります。その生涯を常呂遺跡の保全に捧げられた大西信武氏による不動の熱意が実を結び、東京大学考古学研究室(駒井和愛主任教授)による第一回の発掘調査が、昭和三二年秋に始まりました。昭和四十年十二月には、東京大学常呂研究室が設置され、その後における遺跡調査の研究拠点となりました。更に、昭和四二年には北海道の協力を得て資料館が完成するなど、豊かな自然広がるサロマ湖を見下ろす原生林におおわれた丘陵には、世界に扉を開く学術文化研究のフィールドとしての胎動が生まれ、以来多くの俊英による調査研究が進められ、平成一九年には、東京大学による遺跡発掘五十年の歳月を迎えようとしています。

  東京大学常呂実習施設に赴任された歴代の先生方は、地域における大学の役割を大変重視され、町総合計画・町史編纂・生涯教育などさまざまな分野において、本町のまちづくりにあたっての指針策定等に、多大な貢献をされてきました。町政を預かるものとして、またこの町に暮らす住民にとって大きな羅針盤となっていただいていることに対しまして衷心より厚く感謝を申し上げるところであります。

  このたび、東京大学総合研究博物館春季特別展として、本町における長年の調査研究の成果が、まとまった形で展覧されることは、私共のみならず関係者各位にとりましては、待望久しい企画展であるばかりか、オホーツク地域において独自の地域文化を構築した北方古代文化史についての学術的理解・関心などを醸成・啓発する貴重な機会であります。

  また、本企画展は、地域と大学との連携が、地域の未来を豊かにデザインしていくという「協働」と「共創」の視点についても、示唆に富んだ内容となっております。

  本企画展が、時空を超えていまなお多くの謎につつまれた北方古代文化史の解明に新たな足跡をしるすことをご祈念申し上げると共に、本企画展の開催にあたり多大なご協力を賜りました東京大学総合研究博物館、同大学院人文社会系研究科をはじめ関係各位に深く感謝を申し上げ、特別展開催にあたりましてのごあいさつと致します。




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