デジタルミュージアム2000開催によせて

東京大学総合研究博物館は平成8年の設立以来、研究資料の永久保存に対して積極的に取り組んできた。その中心を占めるアプローチが、「デジタルアーカイブ」と呼ばれる方法である。これは、現存しうる最高のデジタル技術によって研究資料を電子データ化し、それをコンピュータ上のデータベースに保存する手法である。この「デジタルアーカイブ」の取り組みは、更に上位のコンセプトである「デジタルミュージアム構想」の一つとして計画された。この構想の発案以来、既に4年が経過しようとしており、構想に基づいた研究や「デジタルアーカイブ」事業の成果が今や結実しつつある。幸いなことにこの成果は、未来の新しい博物館像を提示するものとして、国内外より高い評価を受けるに至っている。

また今回、「デジタルミュージアム」の一端を担う「分散博物館構想」に基づいた初めての展示実験を、国立歴史民俗博物館と共同で開催することに成功した。遠隔地の博物館を高速デジタル回線で接続し、同じテーマの展示を同時開催する試みは、今だかつて例をみないものであろう。

今回のデジタルミュージアム2000は、こうした本館が推進してきたデジタルアーカイブや分散博物館の取り組みの成果を示す重要な意味を持った展示である。博物館関係はもとより、一般の方々にもなるべく多く御来館頂き、未来の博物館像への知見を深めていただければ、これに優る喜びはない。
最後に、本展示開催にあたり御尽力頂いた館内外の多くの方々に深く感謝申し上げたい。なお、本研究の一部は、平成9年度より、文部省・科学研究費補助金・研究成果公開促進費「東京大学総合研究博物館データベース」を受けている。


川口昭彦

東京大学総合研究博物館長
東京大学大学院総合文化研究科教授